1984年の坂本龍一がよみがえる、暗闇の中で創作の魂に触れる唯一無二の体験「坂本龍一|Birthday Premium Night 2026」レポート
2026年1月21日 16:30

故坂本龍一さんの誕生日を記念し、「坂本龍一|Birthday Premium Night 2026」と題した上映イベントが1月17日、坂本さんが全シアターの音響監修を務めた109シネマズプレミアム新宿で開催された。
本イベントは2024年からスタートし、今回は、ドキュメンタリー「Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto」4K レストア版上映と、坂本さんの4枚目のオリジナルソロアルバム「音楽図鑑」のオープンリールプレイヤー再生という、映画の撮影およびアルバムリリースが行われた1984年にフォーカスした内容だ。毎年チケット発売後即完売、今回も全2回が満席となった人気イベントを映画.comがレポートする。

一般的なシネコンとは一線を画した、映画鑑賞を楽しむための期待をさらに高める、ラグジュアリーな仕様が評判の109シネマズプレミアム新宿のラウンジの一角では、「Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto」上映に関連した展示コーナーが設けられている。


1980年代の新宿の街並みと、当時の坂本さんのオフショットのパネル、さまざまな関連グッズ、そしてミディレコードの協力により、「Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto」にも登場する、坂本さんが愛用した電子楽器、Fairlight CMIが展示されており、坂本さん自筆のメモも確認できる。過去2回のイベントは夜帯の開催だったが、今年は昼帯の2回。冬晴れのこの日、ビルの窓の眼下には新宿の街並みが広がり、展示写真からの時の移り変わりをリアルに感じられた。


また、今回は、映画の中でカラフルなメイクを施した坂本さんが登場することにちなみ、「Tokyo Melody」をイメージした坂本風メイクや80年代ファッションでの来場も歓迎”という、遊び心ある企画も展開された。プロのメイクアップアーティストから坂本さんさながらのメイクを施された劇場スタッフさんたちもおり、誕生日を祝う会場を一層華やかに盛り上げていた。


この日は、上映回入れ替えのタイミングや、展示コーナーをじっくりと見る来場者が重なり、ラウンジには例年以上に多くの人々がひしめいていた。しかし、人が多いことでうるささを感じることはなく、坂本さんを愛する同志としての敬意ある、静かな熱気に満ち溢れていたのが印象的だった。毎年恒例の坂本さんの誕生日を祝うメッセージボードにも、数多くの温かなメッセージが寄せられた。

会場となったスクリーン7では、本イベントに合わせた坂本さんのポートレートがスクリーン全面に投影され、来場者を迎える。まずは、エリザベス・レナード監督によるドキュメンタリー「Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto」の上映だ。1984年、バブル期の東京でわずか1週間という短期間で撮影され、スタジオでのレコーディング風景やインタビューを軸に、当時30代の坂本さんが自身の生い立ちから音楽哲学、文化について語る貴重なドキュメンタリーだ。
(C)Elizabeth Lennard本編については、これから劇場に足を運ぶ方も多いであろうし、すでに多くの記事、レビューも公開されていることから、内容の詳細はここでは割愛するが、80年代から数々のアーティストを撮影してきたレナード監督のカメラが捉える視点と編集、1983年の「戦場のメリークリスマス」カンヌ映画祭でのプレミア上映がきっかけで、坂本さんの音楽的才能とスクリーン映えする存在感に目を付け、いち早くドキュメンタリー作品としたその芸術的嗅覚の鋭さに驚かされる。
(C)Elizabeth Lennardこのレポートで1点だけ、映画の内容について記したいのは、ラスト近くで「音楽図鑑」の収録曲「SELF PORTRAIT」のレコーディング風景に移る直前のシーンで、当時32歳の坂本さんが、“天国”について電話で話す声が収録されていることだ。これまで一般の上映機会はほとんどなく、坂本さんがこの世にいなくなってから全国劇場公開が決まった本作、まるでこのタイミングに合わせたような坂本さんの言葉に心底驚いた。これから映画をご覧になる方は、ぜひ劇場で耳を澄ませて確認してほしい。
そして、休憩をはさんで「音楽図鑑」の試聴会となる。オープンリールプレイヤーを用いて再生されたのは、ミディレコード所有のDolby方式のマスターテープをスタジオでコピーしたサブマスターを用いたもの。これは、マスタリング作業を介在させずに、坂本さんが当時OKを出した音をコピーしたもので、この音を忠実に再生するためにはアナログテープレコーダーを使用するのが、最も理に適う方法なのだそう。

再生機はRevox社のB77MKIIIで、この機器は1967年に初期モデルがリリースされ、名機と呼ばれている。そして、このB77MKIIIは3世代目に当たる機種で、去年日本でも発売されたモデルだ。各方面のプロフェッショナルの協力のもと、坂本さんがスタジオで聴いていた音と同等の音質で再生することを狙いとした、本イベントならではの貴重な試みに胸が高鳴る。
そして、場内の照明が落とされ、プレイヤーだけにスポットライトが当たった暗闇の中で「音楽図鑑」が再生された。「TIBETAN DANCE」の最初の一音から、研ぎ澄まされた音色に引き込まれ、ドキュメンタリー「Tokyo Melody」で坂本さんが語った言葉の数々、制作中の姿を脳内で反芻しながら、その創作の魂に触れられるような体験だった。

とりわけ、ドキュメンタリーのラストで用いられ、試聴会で改めてクリアな音で再生された「SELF PORTRAIT」は、明るく、軽やかないたずらっぽさも感じるポップな楽曲だが、坂本さんは不在、時代も大きく変化した2026年の今聴くと、そこはかとないサウダージのようなものも感じた。当時の坂本さんをリアルタイムでは知らない筆者の胸にも熱いものが去来し、これこそが時を超える音楽の力なのだと実感した。

この日の109シネマズプレミアム新宿スクリーン7は、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が、日常生活の自分の役割から解き放たれ、純粋に、敬愛する坂本龍一の偉業に没入するための静謐な神殿のように見えた。上映会場を出て、もう一度展示コーナーに立ち寄ると、モノとしての楽器ではなく、そこにいた坂本さんの姿もホログラムのように立ち上がってくるようだった。


この期間、109シネマズプレミアム新宿では、実写邦画として歴史的な大ヒットを更新中の「国宝」も連日上映中だ。本作はかつて「怒り」(2016)で、坂本さんに音楽を依頼した李相日監督作であり、坂本さんからの薫陶を受けた原摩利彦氏が音楽を担当している。坂本さんの仕事を愛した後人たちが、新たな芸術の傑作を生み出し、坂本さんなき現在も、そのスピリットは樹木の枝や根のように様々な方向に広がり続けている――「坂本龍一|Birthday Premium Night 2026」は、新たにそんな認識をさせてくれたイベントだった。
「Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto」4K レストア版(https://tokyomelody.com/)は全国で公開中。

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