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本作の題材の“理由なき尾行”もしくは“哲学的尾行”。
実際にそういう研究もしくは実証論が発表されているのかと思いきや、ちょいと調べてみたら、そんな記事ナシ。原作小説の作者のオリジナル哲学。
基になったものが無い訳ではない。フランスの現代美術家ソフィ・カルがフランスからヴェネチアまで一人の男性を尾行し、生活や行動などを捉えた“アート”。本作でも引用されている。
そのアートの中に男性の部屋に侵入して寝顔を取るなどあるらしく、それはアートなのか犯罪なのか…?
あまりに突飛過ぎて分からん…。よって主人公の動機もよく分からん…。
大学院の哲学科に通う珠は、修士論文の題材として教授の篠原から、一人の対象者を尾行して生活や行動を記録する“哲学的尾行”を勧められる。
最初は戸惑う珠だったが、対象者に選んだのは近所に住む既婚男性の石坂。雑誌編集者で、一軒家に美しい妻と幼い娘と暮らしている。
何もかもパーフェクト。が、尾行する内に石坂の裏の顔を見てしまう。背徳感を感じつつも、珠はいつしか尾行にのめり込んでいく…。
住んでいるアパートから石坂宅を覗き見、外出したら後を追い掛け、家の近くからも様子を窺う…。ちょうどそこが町内のゴミ捨て場故、口うるさい近所のおばさんに不審がられる…。
本人にその気は無いが、やってる事はほぼストーカー。邪な感情は無く純粋に論文の為にやっているのだが、端から見たら何が違うと言えよう…?
それを推奨した教授の気も分からん…。
尾行する内に見てしまった石坂の裏の顔。
愛人の存在。珠は2人が路地裏で行為に及んでいる場を見てしまう。
以来、石坂の行動が気になって気になって仕方ない。
石坂が外出すれば急いで後を追う。愛人と高級レストランに入れば、メニューの料理が何一つ分からないのにも関わらず入店。痴話喧嘩に聞く耳立てる。
ある夜、家族と外出。愛人とニアミス。どうやら石坂の妻は愛人の存在に気付いているようだ。嫉妬から大声を上げる。そんな完璧家族の暗部をも見てしまう。
尾行にのめり込むあまり、同棲中のイラストレーターの恋人との時間をないがしろにしてしまう。
尾行にのめり込むあまり、対象者との距離を縮めてしまっていた事に気付かなかった。
愛人に危うくバレそうになる。
嫉妬に苦しんだ妻が自殺未遂を。救急車で運ばれる際、石坂と視線が合う…。
この事がきっかけで石坂にバレてしまう…。
対象者に接触は勿論、バレるのもNG。しかし、尾行を続けたい珠。
後日石坂に呼び出され、論文の為にやっている事、続けたい事を懇願する。
無意識の内に何度か見掛けた珠を覚えていた石坂。
が、その口からは辛辣な言葉。
俺を尾行していただろう? 何が目的だ? 妻に雇われたのか?
否定する珠だが、石坂は信じない。
俺の人生も家族も完璧だったのに、お前の尾行のせいでメチャクチャになった。
いや、これは違うだろう。愛人との関係がぎくしゃくし始めたのも、家族関係にヒビが入り始めたのも、全部自分のせい。
嫌でも見てしまった人の二面性。
それでもすがる珠。時には身体で訴えてまで。
何が彼女をそこまで尾行にのめり込めさせるのか…?
幼い頃の闇深い出来事や空っぽの自分を埋め満たしてくれた…など理由らしきは語られるが、今一つピンと来ず。
だから珠にも石坂にも感情移入出来ない。門脇麦と長谷川博己の演技は申し分ないが。
寧ろ、珠の恋人や愛人や妻の方が生々しい。愛人役の篠原ゆき子の色気と存在感がインパクト残る。
珠は対象者を変えて尾行。その対象者の驚きの秘密…。
リリー・フランキーが哀愁漂わせ絶品。本筋よりこちらの方が何だかしみじみしたかも。
本作で長編映画監督デビューとなった岸善幸。次作で本作でも組んだ菅田将暉と“KO”を魅せてくれなかったら、よく分からない作品を撮る監督と思われてしまっていただろう。
少なからず感性に訴え、分かる人には分かる哲学かもしれない。
深い“理由なき尾行”。いや、何もなく浅いのかもしれない。
私の論文まとめとしては、“理由なき尾行”に得るものナシ。
こんな事言ったら元も子も無いが、そもそもがやはり意味も動機も分からん!