【「ザ・キラー」評論】フィンチャー×ファスベンダー。15年越しに実現した企画は殺し屋映画の新しい形
2023年11月19日 08:30

Netflixと4年の独占契約を結んだデビッド・フィンチャーが、「マンク」に続いて手がける監督作。マイケル・ファスベンダーを主演に迎え、ティルダ・スウィントン、チャールズ・パーネルらが脇を固める。ある殺し屋が見舞われたトラブルと、組織に復讐する姿を描く。2023年ベネチア映画祭のコンペ出品作品。
パリ高級ホテルのペントハウスをのぞむ寂れたビルの1室。標的を待ち続ける殺し屋(マイケル・ファスベンダー)は、ようやく訪れた狙撃機会を思わぬアクシデントによって失う。その結果、報復のため留守中の隠れ家が急襲され、大切な恋人が瀕死の重傷を負ってしまう。復讐を誓う殺し屋は雇用主(チャールズ・パーネル)や暗殺者(ティルダ・スウィントン)たちに孤独な戦いを挑む。
原作は1998年から続く仏の同名グラフィック・ノベル。名も無き殺し屋の日常を描いており、内省的なモノローグと、大胆で残虐な殺しの描写が特徴的だ。著者マッツはジェームズ・M・ケインやジム・トンプソンといった作家に影響を受け、当初は小説として構想された。2007年にパラマウントとプランBが映画化権を取得、ブラッド・ピットが主演する案もあったが、最終的にはフィンチャーがNetflixに持ち込み、ファスベンダーがキャスティングされた。
アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーの脚本は主役を現代風に再設定。改装中のWeWorkに潜入し、「ザ・スミス」の曲で集中力を高め、ヨガとスマートウォッチで体調管理。追跡を防ぐためスマホ(SIMは抜く)や所持品を捨てまくりeバイクで逃走し、電子錠を破る機器はAmazonで調達と、デジタルを駆使するワンオペ殺し屋を誕生させた。007のような高級スーツとは真逆のスタイルは、監督がパリで見かけたドイツ人観光客から着想を得ており、スタッフは空港の免税店の商品だけで衣装を構成した。また、常に冷静さを演出するためか、ファスベンダーは作中ほとんど目瞬きをしていない。
エリック・メッサーシュミットによる国内外のロケ撮影も素晴らしい。フィンチャー組生え抜きとしてオスカーにも輝いたテクニックは、どんな街も薄暗く沈鬱に映し出す。特にフロリダの格闘シーン(巨漢を演じたサラ・ベイカーは「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのサウロン役)は驚くべきカメラの動きに目を見張る。
「ジャッカルの日」やジャン=ピエール・メルビルの「サムライ(1967)」に目配せをしつつ、フィンチャー史上最高額の製作費(「ミッション:インポッシブル フォールアウト」とほぼ同額)で殺し屋映画をアップデートさせた端正で不気味な暴力映画。夜のシーンが多く、挿入歌含め音楽が秀逸なので、間に合えば映画館での鑑賞をお勧めします。
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