【「最後の決闘裁判」評論】中世の#MeTooを、R・スコットが「羅生門」的なアプローチで残酷なまでに燻り出す
2021年10月16日 20:00

あまりに血みどろな映画である。だが、それも尤もだ。時は中世のフランス、すべてが権力と腕力で解決された時代であり、そこには権謀術数こそあれど道徳や情が入り込む余地はない。
そんな時代に起こった実話を元にした本作は、いまで言う#MeToo事件を描いている。
無骨で直情型の武勇として名を馳せるジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)と結婚したマルグリット(ジョディ・カマー)は、彼の留守中、その友人であり漁色家として知られるジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)に計画的に襲われる。彼女は事件を告発するが、ル・グリが否定したため、裁判は当時の形式にのっとり、決闘により解決されることになる。建前としては、真実は神のみが知るところでその神が運命の決定を下す、というものだが、要するに武力での解決であり、もしも夫が負ければマルグリットも偽証罪として火あぶりになる。なんという不条理だろう。
こうして、男ふたりのプライドを掛けた世紀の決闘が始まる。見るからに重そうな甲冑がぶつかり合い、剣が肉に突き刺さる闘いは、思わず目をそむけたくなるような、肉弾戦ならではのショックとヴァイオレンスに満ちている。
だが本作には、大きな捻りがある。それは物語が「羅生門」さながら、異なる視点から描かれていること。カルージュ、マルグリット、ル・グリという3つの視点からリピートされる描写は、その違いにより、各キャラクターの多面性、認識の差を浮き彫りにする。
たとえばカルージュにとってル・グリは共に生死を賭けて闘った友であり、彼の視点から世界が描かれるとき、カルージュは処世術には欠けていても誠実で愛すべき男に感じられる。一方マルグリットにとって、そんな彼との夫婦生活には微かなほつれが生まれ、感情の食い違いが乗じる。そして女性の扱いに長けたル・グリの危険な側面も、彼女は敏感に察知する。一方、これがル・グリの視点になると、カルージュは自信過剰の愚かな男であり、マルグリットは自分の魅力に降伏したことになる。女に拒否されたことのない彼にとって、強姦という言葉は存在しないのだ。そこにこの問題の難しさがある。
ベン・アフレックと共に脚本にも参加したデイモンが、誠実さから愚かさまでの幅を演じきり、不快な尊大さを滲み出すドライバーとみごとな対峙を繰り広げる。だが本作での主役はあくまで、見えない血を流すマルグリット/カマーだ。ラスト・シーンの彼女の表情は、まるで我々にこのテーマを問いかけるかのようであり、観客の脳裏にいつまでも残り続けるだろう。
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