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【「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」評論】ダニエル・クレイグ最後のボンド作品は多様性あふれるアクション・メロドラマ

2021年10月8日 21:00

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「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」
「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」
(C)2019 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

6代目を15年にわたり演じてきたダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドが、5作目にして卒業を迎える。まさに「スター・ウォーズ」か「ゴッドファーザー」か、ボンドの血脈にまつわる壮大な物語がついに幕を下ろす。前作「スペクター」で、孤児のジェームズと兄弟として育てられた男が黒幕だったことが判明したが、そこに殺人ウィルスを操る新たなる敵サフィンとの因縁も絡みあい、予想不可能な結末を迎える。

既報通りシリーズで唯一ボンドが結婚する過去作「女王陛下の007」を色濃く反映、恋人マドレーヌの陰惨な過去、彼女がボンドと育む愛の形が描かれる。冒頭に「カジノ・ロワイヤル」で死んだ恋人ヴェスパーの墓参りシーン(「ユア・アイズ・オンリー」のオマージュか)を入れるなど、メロドラマの要素も強く多義性に富んでいる。

「スカイフォール」からのテーマ、スパイ諜報戦を手がけるMI6部門が時代遅れという議論は、同ジャンルの傑作「裏切りのサーカス」の原作で知られるル・カレのスマイリーものが出版された70年代から題材とされてきたが、本作ではそれをより進展。新エージェントとのジェンダーレス、エイジレスなチームプレイを実現、時代に合わせた試みを模索した脚本チームの技に唸る。

ボンドと新007のギャップあるバディ感、MI6とCIAのコラボと探り合い。前作で初対面のマドレーヌを即座に仏人だと見破った慧眼の士Qのキャラを立たせ、イジられ要素含め活躍させたりと遊びや仕掛け満載ながら、コンプライアンス、ボーダレス時代に命懸けで国益を守るスパイの存在意義という矛盾も同時に浮かび上がる。

原作ボンドの条件、身長180cm超、面長、黒髪、灰色の瞳に合致せず(クレイグは178cm、金髪、青い瞳)、「カジノ・ロワイヤル」の襲名イベントでは安全ベルト付でボートに乗り登場、会見では緊張からの無口が災いし、メディアは落胆、アンチの発生で大炎上したクレイグも遠い昔、今ではタフで寡黙な佇まいと大怪我も厭わないスタントが評価され、歴代最高ボンドのリブートに成功した。

ロード・トゥ・パーディション」で組んだサム・メンデスを推薦、英国の陰影にこだわる「スカイフォール」を創り上げたクレイグだったが、今回は次世代ボンド作品の候補になっていたところ、降板したダニー・ボイルの代打として急きょ打席に立った初の米人監督キャリー・フクナガをパートナーに、リアル路線踏襲と伏線回収に加え、有終の美を飾るという難事業に挑んだ。多言語話者で移民視点を持ち、日系人役で俳優経験もあるフクナガは、多様性ある物語を163分にバランスよく収め、泣けるボンド映画に仕上げた。これきっかけで映画館通い再開の人も多いと思うが、人間関係で混乱しない様に「スペクター」の事前鑑賞を推奨します。

(本田敬)

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