若き巨匠ファティ・アキン、最新作は「私的なフェリーニの『8 1/2』」
2011年1月21日 19:38

[映画.com ニュース] 「愛より強く」「そして、私たちは愛に帰る」に続き、最新作「ソウル・キッチン」でついに3大映画祭を制覇したドイツの若き巨匠ファティ・アキン監督。2009年ベネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した今作について語った。
ハンブルクでレストランを経営するジノスが、ユニークな仲間たちに囲まれながら、不運続きの日々を持ち前の明るさで乗り越えようと奮闘する群像コメディ。アキン監督は、親友アダム・ボウスドウコスと共同で脚本を書き上げ、ボウスドウコスは主演も兼ねる。
「このレストランは、僕らの人生の一部みたいなものなんだ。アダムが10年ほどオーナーを務めていたレストランは売れないアーティストのたまり場で、オアシスもしくはミクロコスモみたいな存在だった。シェフが監督、ウェイターが俳優というように、レストラン経営は映画づくりに似ているから、映画づくりを描かずに映画づくりを描くことができるという発見があった。私的なフェリーニの『8 1/2』だね」
これまで自身のアイデンティティであるトルコ系ドイツ人を描くことが多かったアキン監督だが、今回はアダムのバックボーンであるギリシャ系青年が主人公となる。「トルコ系は一番よく知っている世界だから一貫してやってきたけど、実はそんなに自分の出身を気にしていないんだ。そもそも白人を描く白人の映画作家はいっぱいいるわけだから、僕がそれをやる意義を感じない。トルコ系を描くのもそろそろ飽きてきたし、そういうことにこだわらずに物語を描いていきたい」と語る。
かねて、愛・死・悪の3部作を製作してきたアキン監督だが、本作の位置づけはその“死”と“悪”の中間にあたる。「“悪”に取りかかる前に、自分がすごく疲弊(へい)していることに気づいて、違うトーンの作品を撮ることで休憩したいと思ったんだ。『ソウル・キッチン』は僕にとって特にパーソナルな作品だし、ユーモアを取り戻すための良い薬だった」と述懐。そして、「例えば、『ハングオーバー!』は脚本もよく書けているし、リズムやタイミングのセンスにも長けている最高の映画だと思う。世界中のどこに行っても観客を笑わせるというのは、実はとても難しいことなんだ。だけどこれまでのシリアスな作風から、テイストをガラっと変えることにはとてもプレッシャーを感じていて、恐怖とヒステリーの嵐に見舞われた時期もあった」と当時の心境を振り返った。
「僕には大きなスタジオがついているわけじゃないから、評論家に支えられている部分も多い。だから、この作品は今までつちかってきた風評にリスクになるかもしれないと思った。だけど、全ては観客のもの。観客にとって良い意味でのサプライズになったみたいだから、やってよかったよ。自分のやるべきことをやればなるようになるもんだと改めて思ったね。これでリフレッシュできたから、心置きなく最終章の“悪”に取りかかれる」と早くも次回作へのスタートを切った。
「ソウル・キッチン」は、1月22日より公開。
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