偽りの花園

劇場公開日:1954年8月

解説

「黄昏(1951)」のウィリアム・ワイラーが、製作者サミュエル・ゴールドウィン(「アンデルセン物語」)のもとで、「西部の男」について1941年に監督した悪女ドラマ。原作はリリアン・ヘルマン作の舞台劇で映画のための脚色も彼女が行い、「氷上の花」のアーサー・コーバー、ドロシー・パーカー、「運命の饗宴」のアラン・キャンベルの3人が台詞を追加している。撮影監督は「ダニー・ケイの牛乳屋」の故グレッグ・トーランド、音楽メレディス・ウィルソン。「イヴの総て」のベティ・デイヴィス、「クーパーの花婿物語」のテレサ・ライト、「女海賊アン」のハーバート・マーシャルが主演し、ほかに「青いヴェール」のリチャード・カールソン、「クーパーの花婿物語」のパトリシア・コリンジ、「雷鳴の湾」のダン・デュリエ、「真紅の女」のチャールズ・ディングル、「激情の断崖」のカール・ベントン・リード、ジェシー・グレイスンなどが出演する。

1941年製作/アメリカ
原題または英題:The Little Foxes
配給:大映洋画部
劇場公開日:1954年8月

あらすじ

20世紀初頭、米国南部の小さな町。富裕な銀行主ホレイス・ギデンス(ハーバート・マーシャル)はながく心臓を患いボルティモアで入院療養中だった。妻レジナ(ベティ・デイヴィス)は夫を見舞いもせぬ冷たい性格の女、近くに住むレジナの兄ベンとオスカーは儲かることなら何でもしかねぬ連中で、南部の安い労働賃金を餌に東部商人と結び、この町に綿工場を建設しようと画策していた。この計画に出資を勧誘されたレジナは、投資負担額7万5千ドルを夫から出させようと、娘アレグザンドラ(テレサ・ライト)をボルティモアにやって夫を連れ帰らせた。衰弱の烈しい身で帰ってきたホレイスは悪らつなレジナの兄たちを嫌って出資を拒んだ。オスカーはギデンス家の財産目当てに息子のリオをアレグザンドラと結婚させたく思い、利害を共にするレジナも反対しかねていたが、アレグザンドラには新聞記者デイヴィッド・ヒュウィットという恋人がいた。ホレイスの銀行に勤めるリオから、銀行の金庫にホレイスが9万ドルの債券をしまいこんだままになっているときいたオスカーは、リオを使ってそのうち7万5千ドルを盗み出させた。ある日、金庫に入れておいた遺言状を直そうとして銀行に行き、債券の紛失を知ったホレイスはすべてを察した。そしてレジナに遺産は全部アレグザンドラにゆずるように遺言状を直すと言い渡した直後、はげしい発作に襲われた。ホレイスは、2階から鎮静剤をとってきてくれとレジナにたのんだが、彼女は黙殺した。ホレイスが自分でとりに行こうとして階段の上で昏倒したとき、レジナははじめて大声をあげて人を呼び手当てをした。が、ホレイスはそのまま死んで行った。彼が死ぬと、レジナはすぐ兄たちに債券を盗んだことを非難し、それをたてに暴利をむさぼろうとした。そんな母の態度を見て、アレグザンドラの清純な心は耐えられなかった。彼女は母をすててデイヴィッドの許にはしった。窓のかげから彼女を見送るレジナの眼には、子供からさえも背かれた、寂しい涙が浮んでいた。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

第14回 アカデミー賞(1942年)

ノミネート

作品賞  
監督賞 ウィリアム・ワイラー
女優賞 ベティ・デイビス
助演女優賞 パトリシア・コリンジ
助演女優賞 テレサ・ライト
脚色賞 リリアン・ヘルマン
編集賞 ダニエル・マンデル
作曲賞(ドラマ) メレディス・ウィルソン
美術賞(白黒)  
詳細情報を表示

映画レビュー

3.5 偽りの花園

2026年1月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

リリアン・ヘルマン作の戯曲「小さな狐たち」を、ヘルマン自身が映画用脚本に翻案し、「この三人(’36)」「デッドエンド(’37)」「黒蘭の女(’38)」「嵐ヶ丘(’39)」「西部の男(’40)」「月光の女(’40)」「ミニヴァー夫人(’42)」「我等の生涯の最良の年(‘46)」「探偵物語(’51)」「ローマの休日(‘53)」「友情ある説得(’56)」「大いなる西部(’58)」「ベン・ハー(’59)」「噂の二人(’61)」「コレクター(‘65)」「おしゃれ泥棒(‘66)」の名匠ウィリアム・ワイラーが監督したサミュエル・ゴールドウィン・プロ全盛時代の名作の一本である。オリジナルが舞台劇である為、映画の大半が屋内シーンであり、一見よくある舞台劇の映画版と言った構成でありながら、アメリカ映画史上もっとも有名な撮影監督の一人であり、ジョン・フォード、ハワード・ホークス、オーソン・ウェルズ等の偉大な作品の撮影監督としても活躍したグレッグ・トーランド(「狂恋(’35)」「この三人(’36)」「デッドエンド(’37)」「嵐ヶ丘(’39)」「怒りの葡萄(’40)」「西部の男(’40)」「果てなき船路(’40)」「市民ケーン(’41)」「教授と美女(’41)」「ならず者(’43)」「南部の歌(’46)」「我等の生涯の最良の年(‘46)」「ヒットパレード(’48)」)による他の追随を許さない優れた撮影・照明技法により、極めて映画的な作品に仕上がっている。登場人物の動きに合わせた計算し尽された流麗なカメラワーク、前景・中景・後景に居る3者の登場人物を同一フレーム内に収め、3者の表情を克明に捉えたパンフォーカスならではの緊張感溢れる構図、それとは逆に、後景の人物をぼかし、手前の人物のみにピントを合わせたショット、複数の登場人物が映り込んだ複数の鏡を同一ショット内に収めた驚異的なショット、鏡以外のオブジェへの事物の反射を捉えていく見事な照明技法等であり、他の撮影監督の作品では絶対にお目にかかれないほとんど神懸かり的なショットやシーンが満ち溢れている。
この時代のワイラーは1940年代初頭から1950年代半ばにハリウッドで流行した映画ジャンルであるフィルムノワール的な陰鬱な心理劇を好んで監督しており、個々の役者から緻密で緊張感溢れる演技を引き出しながら登場人物たちのキャラクターを掘り下げているが、前記トーランドによる撮影技法がそれらに見事に呼応しているからこそ成し得られたものとも言えよう。
ベティ・デイヴィス演じる女主人公は、他のフィルムノワールやギャング映画で彼女が演じてきたファムファタール役を含め、キャリアの頂点と言っても過言でなない程に圧倒的な存在だが、それとは対象的に誠実だが病弱な夫役を演じるハーバート・マーシャル、無垢な娘役のテレサ・ライト、その他助演級俳優を含め、個々のキャラクターと役者が完璧にマッチしている為、20世紀初頭のアメリカ南部を舞台にしたこの映画の世界にみるみる引き込まれてしまいました。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
ナオイリ

3.5 俳優陣のアンサンブルが素晴らしい愛憎劇

2025年8月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

20世紀初めアメリカ南部の富豪ハバード家の三兄妹を中心に、愛憎が渦まく人間ドラマをワイラー監督が鮮烈に描きます。

前半、綿工場誘致で東部の実業家を招くシーン。贅沢な料理や酒、ピアノ演奏でもてなすのですが、長兄のベンや次兄の嫁のバーディは浮き足だってしまいます。そこはベティ・デイヴィス扮する妹のレジーナが手綱をしっかりと握ります。さしずめ現代だと、完璧なパワポ資料を準備し、誘致に向けた流れるようなプレゼンを行うといった感じでしょう。

それにしてもこの三兄妹の冷酷で強欲なこと。兄妹同士での腹黒い駆け引きは、薄ら寒さを覚えると同時に目が離せない程面白いです。
中でもレジーナの悪女ぶりは群を抜いています。病弱な夫で銀行家のホレースに「早く死ぬがいい」とのたまう時の、白塗りの表情の怖さ。いくら夫婦仲が冷め切っているとはいえ、ここまで無慈悲になれるのかと背筋がこおります。デイヴィスの後半生の数々の怪演に繋がる恐ろしさです。

悪に対する善なる存在として、娘のアレクサンドラが配されます。幼少期から母レジーナに支配されてきましたが、ラストでは遂に母と対決します。そう、本作は彼女の成長物語とも言えるのです。アレクサンドラに扮するテレサ・ライトの「ハリウッドのお嬢様」というキャラを方向付けた名演です。

ハーバート・マーシャルの病弱ながらも確たる信念をもった夫ホレース、パトリシア・コリンジの政略結婚結婚の犠牲者で精神的にやられてしまった義姉バーディ、馬鹿息子ぶりが甚だしいダン・デュリエら他の俳優陣のキャラも立っていて、どれもが素晴らしいです。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
sugar bread