【「アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド」評論】ロボットの恋人がもたらす甘さと深みが絶妙! SFらしくないヒューマン・ロマコメ
2022年1月10日 18:00

人型ロボットは、人間にとって理想の伴侶になりうるか? 「アンドリューNDR114」や「her 世界でひとつの彼女」など数多くの作品が問いかけてきた、SF映画にとっては使い古された命題だ。しかし、この女性監督によるドイツ映画はひと味違う。
設定は間違いなくSFだが、近未来を思わせる描写はほとんどなく、むしろレトロ。すべてが現代、今この瞬間と地続きだと感じさせる世界観がかえって新鮮。日本の少女漫画をドラマ化した「絶対彼氏~完全無欠の恋人ロボット」と驚くほど設定は似ているものの、テイストは真逆。深遠で哲学的なテーマを提示する、大人のロマンティック・コメディなのだ。
主人公は、中年にさしかかった孤独な考古学者のアルマ。彼女は研究資金を調達するため、ロボット開発会社が行う実験に渋々ながら参加する。それは自分を幸せにするよう綿密にプログラムされた、高性能人型AIロボットと3カ月をともに暮らすという実験だった。イギリス訛りのハンサムで知的なロボット=トムは、頑ななアルマの心にどんな影響を及ぼすのだろう?
トムに対して懐疑的かつ辛辣な態度をとるアルマと、彼女を喜ばせる行動や言葉をドヤ顔で決めたつもりでバグったり空回りしがちなトムとのやりとりが、まずちゃんと面白い。想定外の反応にアルゴリズムが追いつかないときの、トムのきょとんとした表情。彼女の言葉に対する機械的な受け止め方に、人間的な思いやりをブレンドしたようなセリフ。トムを演じるダン・スティーブンスが“理想の伴侶”としての説得力を発揮、「いてほしい」と思わせることが、この映画を格段にチャーミングにしている。しかもトムは彼女の反応から学習し、どんどん精度を増していくのだからたまらない。
そしてこの映画は都会の独身女性が抱える孤独、ミッドライフ・クライシスについて掘り下げた人間ドラマでもある。心の脆さを抱えたアルマがトムに惹かれながらも機械扱いして遠ざけるのは、自己防衛のため。彼女のプライドと理性と知性が、トムに溺れることを自らに許さないのだ。この揺れ動く複雑な感情が手に取るようにわかる。そして、人間にとってあるべき姿とは? 愛とは? 理想とは? 孤独とは? 幸福とは? などなど、さまざまな問いを投げかけてくる。甘さと深みのバランスが絶妙!
もちろんハリウッド映画のようなわかりやすい大団円のハッピー・エンドは期待しない方がいい。でもこれは悲劇じゃない。映画の終わりにはいろいろなことを考えさせられると同時に、きっと心に微笑みが浮かんでいるに違いない。
(C)2021, LETTERBOX FILMPRODUKTION, SÜDWESTRUNDFUNK
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