今泉力哉監督が語る、映画における“自然さ”へのこだわり
2016年1月12日 06:00

[映画.com ニュース]ナチュラルで繊細な恋愛群像劇に定評のある今泉力哉監督最新作「知らない、ふたり」が、1月9日に公開された。人間同士の狭い世界を魅力的に描き続ける今泉監督が、作品づくりのこだわりを語った。
さまざまな恋愛模様を通して「ちゃんと好き」とはどういうことかを考察した「サッドティー」(2013)が、第26回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門に出品され、注目を集めた。小さなテーマを選ぶことで批判されたこともあったというが、「誰かを好きになるということや、それが終わってしまうことにすごく興味がある」「映画をつくり続ける中で、わかったんですけど、自然とそれしかもう書けなかったんです」と姿勢はぶれない。
最新作では、全員が片思い中の7人の男女の恋愛感情が不器用にぶつかり合う。登場人物たちは、もどかしいほどに「正直者」なのだという。「本当に言わなくていいことを、それが良いことかのように正直に言う人がいっぱい出てくる。もうちょっと普通の人は隠すだろみたいな。勝手に思ってりゃいいのに」と、自ら作り上げたキャラクターに呆れ顔。それでも、「正直すぎる人って、悪い人だったり嫌な人なのに、何か愛らしく見える部分もある」と愛情たっぷりに笑う。
(C)2015 NIKKATSU, So-net Entertainment, Ariola Japan今作で、韓国の人気アイドルグループ「NU’EST」のレン、ミンヒョン、JRがメインキャストとして日本映画初出演を果たした。「1時間くらい話をして、そのときにキャラクターがちょっと見えたので、ある種当て書きな部分もある」といい、「レンは主演でキャラクターも立っていますけど、1番ひかれたのはミンヒョンだった」と明かす。登場人物のなかで最も優しい男ナム・サンスを演じたミンヒョンを「すごく(周りに)気も使うし、いつも笑顔。日本語能力も高いので、日本語の芝居が1番多い」と評価した。
さらに、「レンはすごく真っすぐで、天然で、ひとりでいることができる人。JRは、格好つけてるわけじゃないけど、佇まいが格好いい。(キザすぎて)『これできるのかな』っていう抱きしめるシーンとか、成り立たないかもと思っていたシーンも、めっちゃ画になる(笑)」とそれぞれのポテンシャルの高さを賞賛。「サッドティー」に続き出演した青柳文子とは、すでに信頼関係を築いているようで「細かな芝居のニュアンスは任せている」「基本的に(役者に)任せて、面白いのが出てきたほうがいい」と、演出でもリアルさを追及した。
(C)2015 NIKKATSU, So-net Entertainment, Ariola Japanそんななかでも、会話の「生っぽいやり取り」に強いこだわりをみせる。言葉の間や、口ごもったり、相づちを打ったりするタイミングなどすべてを台本に書いているという。「アドリブっぽく見えるというのはすごく嬉しい。普段言っている言葉でドラマを作れないかなという意識はすごくある」。不自然なほどドラマチックになりがちな恋愛映画というジャンルに、“自然”な流れを持ち込む。現実世界で人と人が出会うという奇跡を尊重する、今泉監督の流儀だ。「話を進めるためだけに何かをする」ことは受け入れない。「フィクションだから、いきなりその場でたまたま出会ってもいいんですけど、嘘の許容はすごく狭いので」と真摯な眼差しを向けた。
現在もいくつかのプロジェクトを準備しており、そのうちのひとつは「今までで1番規模が大きい原作もの」とキャリアは順風満帆だ。“大作映画”を撮るために、「社会(問題)とか政治とかを入れるべき」とアドバイスを受けることもあるというが、大切にしたいことは別にある。「結局個を描くことこそ、リアリティだったりするのかなって。まだまだ大した事件が起きなくても作れる映画があるなって今思うので、今後ももっともっと個人的なこと(テーマ)になっていくかなという気がします」。
「知らない、ふたり」は、公開中。
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