僕はふつうに楽しかったですよ!
てか、アリシア・シルヴァーストーン、
アンタ、こんなところで何やってんの???(笑)
ラスト・クレジットが流れてくるまで、
まったく誰だか気づかなかったぜ!
『ダリアン』や『クルーレス』の美少女アイドルが、こんな迫力満点のおばちゃんになってたとは……。いや、当人も別に裏ぶれ感はなく、ホント楽しそうにやってて何よりでしたが。
いわゆる「シットコム」(シチュエーション・コメディ。特定の固定された舞台と登場人物が織りなすコメディドラマ。スタジオで観客を前に収録されるのが一般的。『アイ・ラブ・ルーシー』『フレンズ』など)をベースに、それがだんだんと血みどろコメディ・ホラーに「侵蝕」されていく過程を愉しむ映画。
最初は「シットコム」の定石どおり、観客の笑い声がガンガン入るし、カメラやスタッフの様子も映り込む。だが、物語がホラーの度合いをあげていくごとに、だんだん観客やスタッフの気配は消え、「単なる密室劇」へと変貌していく。
こっちもなんとなく油断して、途中からは単なるバカホラーとして観ているのだが、終盤になって思い出したように、もともとの設定を活かしたネタを思い切りかましてくる。
ああ、そういうことしたかったんだ!(笑)
ちょっと……『サブスタンス』みたいな??
ただ、他のレビュアーの方も書いていらっしゃるように、この「お笑い」の部分が別にたいして面白くないんだよね……。
それが「わざと」笑えないコメディに仕立ててあるのか、西洋人とは笑いの好み自体が違うだけなのか、その辺は正直よくわからない。
実際、向こうで大ヒットしているような『フルハウス』とか『アルフ』といったシットコムを観ても、個人的にはそんなに面白いと思ったことはないしなあ。キャラは好きだけど、笑い転げるかって言われると微妙だったような。
まあ今回の映画とか、おれダメ人間だから、同性愛ネタとかお下劣ネタだけは、ふつうにおかしくてケタケタ笑いながら観てたけど(笑)。
とにかく、ドジでなんでも壊してしまうわりに自信満々で熱狂的なクリスチャンのお父さんと、ワーキングウーマン(でおそらくダメ亭主を養っている)の奥さんと、チューインガムの好きなバカ娘と、ギークで実験狂のダメ息子が、住居に入り込んできて勝手に破壊しまくって「何かを探し回っている」ロシア人親子三人組に、恐ろしい目に遭わされる話。
まともな人間は奥さんしかいないのだが、旦那のあまりのバカさ加減とロシア人の常軌を逸した狼藉ぶりにメンタルをやられて途中で幼児退行してしまうので、作中にはまっとうなツッコミ役は誰もいなくなってしまう。
あとはひたすら狂騒的なノリで、破壊と暴力とドラッグとセックスのオンパレードがコミカルに提示されていくのだが……。
「シットコム」×「コメディ・ホラー」の発想源としては、たぶんジョン・ウォーターズの『シリアル・ママ』あたりがあるのかもしれない。あっちのキャサリン・ターナーは「あまりの沸点の低さ」が笑いの核心にあったんだけど、本作のお父さんは磔の刑に処されてもなお爆発しない。会社や家での俺自身を観ているかのようだ(笑)。
この物語の場合、臨界点はわかりやすくて、
ひたすら酷い目に遭いつづけたお父さんが、
一体いつ爆発するのか? というのが焦点になる。
普段から本当に使えないダメな旦那さんなので、
お前に果たしてキレる権利があるのか??とは言いたくなるけど。
一方で、本作は徹底したおバカホラーの外見の内側に、明快な宗教的含意が塗り込められている。
クリスチャン一家は、文字通りクリスチャン。すなわちキリスト教徒である。
デブの父親は子供たちに手編みでキリスト柄のセーターを編み、休日に働くことを安息日だからといって忌避する。聖書を読ませ、神に祈り、ミサに家族で参加することを強いる。男色を嫌い、隣人を愛し、イースター(復活祭)を祝う。
そこに現れたのが、ロシア人一家の闖入者だ。
このロシア人三人組によって、キリスト教一家はとことん蹂躙され、破壊され、めちゃくちゃにされる。ここでのロシア人は、共産主義による福音派的価値観に対する攻撃を表しているのかもしれないし、あるいは西欧社会に対してまさに現在進行形で行われている、ロシアによる力まかせの侵略と現状変更の挑戦を揶揄しているのかもしれない。
なんにせよ、ここで描かれているキリスト教一家とロシア人の血族による抗争は、ある種の政治的・宗教的な戯画であり、パスティーシュである。
ロシア人一家のキャラクターには、ある意味、われわれの考える類型的な「悪いロシア人」像が写し込まれている。
絶対的な家父長制。傲慢で強引で暴力的な父親。魯鈍で粗暴な息子×2。子供は父親から残酷な体罰を受けながらもなお絶対服従を誓い、全くそのことに疑念を感じない。親の世代はウォッカの飲みすぎで完全なアル中のうえ短命、若者は知的には最底辺で薬物汚染と同性愛になじんでいる。全員、行動は常に短慮で直情的、相手を侵襲し蹂躙することには一切の遠慮がないが、「ファミリーの絆」だけは宗教的なまでに頑なに信じている……。
一方でクリスチャン一家も、若干ファナティックなキリスト教信仰の一面を揶揄し、戯画化した存在であるように思われる。終盤、撃たれたパパがよくわからない理由で大魔神のごとく蘇るのだって、要はキリストの「復活」とかけているんだろうだし。
たとえくっだらないB級ホラー・コメディの皮を被っていたとしても、ここで行われているのは過たず、異なる宗教的な背景をもつゲルマンとスラブの「文明の衝突」なのだ。
なお、あんだけ着弾してるのにパパやけに元気だなとか、娘の吐き出した「ガム太郎」(あか太郎のガム版)は所詮ただのガムだろとか、そういった細かいことは言ってもしょうがない空気の映画なので、言いません。
とにかく総じて思ったのは……
俺、あんなキモいお父ちゃん、マジでイヤだ(笑)。