この庭に死す

解説・あらすじ

シュールレアリズムの名作「アンダルシアの犬」やアカデミー外国語映画賞を受賞した「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」など多様な作風で高く評価された巨匠ルイス・ブニュエルが、メキシコ時代の1956年に手がけたサバイバルドラマ。南米のとある鉱山村を舞台に、ひと癖もふた癖もある人々が繰りひろげる命がけの戦いを描きだす。出演は「年上の女」のシモーヌ・シニョレ、「軽蔑」のミシェル・ピッコリ、「恐怖の報酬」のシャルル・バネル。

1956年製作/104分/フランス・メキシコ合作
原題または英題:La mort en ce jardin

スタッフ・キャスト

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Mort en ce jardin : (C) 1956 Les Grands Films Classiques – STUDIOCANAL

映画レビュー

3.5 この庭に死す

2026年1月24日
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鑑賞方法:VOD

シモーヌ・シニョレ(娼婦)、シャルル・ヴァネル(老採掘者)、ジョルジュ・マルシャル(冒険家)、ミシェル・ピッコリ(神父)、ミシェル・ジラルドン(老採掘者の娘、聾唖者)に代表される個々のキャラクター造形とそれらを的確に演じる彼等役者たちが素晴らしい。
ブラジルに近い南米の架空の国のダイヤモンド鉱山で、一獲千金を狙う違法採掘者たちが掘り当てたダイヤモンドを搾取しようと企む腐敗した政府側の人間たち。鉱山に近い田舎町において、採掘者と政府軍とが一触即発の状態に陥り、あることがキッカケでついに戦闘状態に入ってしまう。反乱を起こした訳では無いにもかかわらず、老採掘者は首謀者としての容疑を掛けられ、またふとしたことから逮捕された冒険家は脱走を試みたことから、追われる身となる。これに主要キャラクターである残り3人が巻き込まれ、計5人による逃亡劇が始まる。
政府軍の裏切り者から船を奪い、ジャングル地帯を走る河を利用してブラジル国境を目指す5人。これに対して、高速艇で後を追う政府軍。田舎町での採掘者たちと政府軍との攻防を背景に、映画の前半部では5人の主要キャラクターの過去や人間関係が描かれるが、船による逃亡劇が始まる中盤からは、より映画的な動的なドラマへと変化していく。
ジャングルや沼地を舞台にした逃亡劇、船による河下りや河の遡上はそれだけで映画的であり、様々な名作や傑作、「沼地 ('41)」、「アフリカの女王 ('51)」、「Lure of the Wilderness (ジャングルの逃亡者)('52)」、「砲艦サンパブロ ('66)」、「地獄の黙示録 ('79)」等々を想い出す。本作もそんな一本と言えるのだが、船による逃亡劇はそれほど長くは続かず、彼らは船を棄てて上陸し、ジャングル奥深くへと入り込んでいく。食糧がなく、野獣の叫び声がこだまする森林、湿地帯、スコール、迷宮の中を彷徨い歩いての堂々巡りで、精根尽き果てていく。このジャングル内で、現れる数々の強烈なイメージ、大きなニシキヘビをナタで裂いて、焼こうとするが湿った木々になかなか火がつかない。気付けばのたうち回る裂かれたヘビに群がる無数の蟻の群れ。ジラルドンの美しい髪が木々に絡まり、蜘蛛の巣状に大きく拡がる不思議なイメージ、真二つに千切られたパリ(凱旋門)の写真、ページが引き千切られた聖書、そこに挟まる虫たちの死骸。更にはジャングル内に墜落した航空機を発見する。搭乗者の遺体一つ画面には映し出されないが、残された遺品や宝石を身に纏い、口紅をつけたりして、とてもジャングル内とは思えないハリウッドのスタジオ内のセット撮影に切り換わったかの様な人工的なイメージへの変貌。これらリアルなイメージとシュールなイメージの数々が強烈に眼に焼き付く。
とは言っても、ルイス・ブニュエル監督作品としては、後期の作品に見られる人を喰った様な不可思議な展開や官能的な作品ではなく、普通のドラマとしてよく出来た観やすい映画だ。スタジオカナル(StudioCanal)によるデジタルリマスター版の仕上がりが良く、イーストマンカラー=スタンダードの画面が美しい。

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ナオイリ