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その結末はホラーに限らずノンジャンルで最悪級のバッドエンドとして有名ですが、「サイレント・ヒル」@2006のような濃霧の幻想的な雰囲気が好みだったのと、状況がかなり謎めいていて、そちらに気を取られて登場人物への感情移入が乏しく、トラウマ的ショックをどうにか免れました。
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・ ホラー作家の楳図かずおによると、ホラーの作中に追われる者、追う者とがある場合、視聴者は自分に似ていると感じる作中人物に感情移入するという傾向があります。その対象はまず追われる側の者。ただ、追う側を好むという視聴者も中にはいるので、追う側についてもきちんと描いておくことが恐怖を演出する上で欠かせないというセオリー・・
・ ところが本作では、追う側の怪物はいろいろ出てきても最後までずっと正体不明。自ずと感情移入の対象は追われる側(狩られる側)に絞られますが、その追われる側が自らの置かれた状況を考えれば瑣末とも言える主導権争い〜いかにも人間らしい〜をするという形でドラマが展開してしまう・・
・ そして本作の驚愕のラストシーンでは、それまで描かれてきた人間模様やドラマ性をあっさりと拒絶。ドラマ性の拒絶がドラマだったのか!? 本作の大きな魅力です。★
(冒頭シーンで子供の安否が気になって帰宅しようとする女性を全員がスルー。結局、モブキャラであったこの女性が、唯一救出されていますが、序盤で実質退場したに等しい登場人物に、感情移入している視聴者はいないはず。)
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・ そして、改めて感じるのが、欧米ホラー特有の「不条理性」です。そこではなんの脈絡・因果関係もなく襲われる。ゾンビが典型的。和製ホラー(四谷怪談や番町皿屋敷、牡丹灯籠)のような「因果応報」的な論理がそもそもない。
・ 更に本作の場合、生存者がなぜ生き残れたのかは、生存能力や倫理性とも全く無関係で、不条理に不条理を重ねる構成になっています。★
(欧米ホラーはなぜ不条理なのか? 文化的基層に関わる謎。キリスト教だと死後は寝ている状態で最後の審判に待機中なので、恨みつらみで化けて出てくることはない。ただ、古代ギリシアや古代メソポタポタでは、「生ける死者」という概念があり、ホラー定番のヴァンパイアやゾンビ、あるいはサキュバスもそのカテゴリーに属します。モンスターともどもそれらは、人間との繋がりがないからだ、ということなのかもしれません。)
《まとめ》 本作はドラマ性を拒絶しているので、ドラマ志向であると痛手を被ります。欧米ホラーはもともと不条理ですが、本作は輪をかけて不条理であるという怪しげなオーラを強烈に放っています。