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稀代の天才にして変人、ウィリー・ワンカ(ウォンカ)が経営する世界最大のお菓子工場の秘密を描いたミュージカル・ファンタジー『ウォンカとチョコレート工場』シリーズの第1作。
子供たちに大人気のウィリー・ワンカのチョコレート。しかし、その工場は謎に包まれており、出入りする者は誰も居なかった。
そんな中、ワンカが工場見学を開催するというニュースが世界中を駆け巡る。その参加権を得るには、チョコレートに忍ばされた「金のチケット」を手に入れなければならないのだが、チケットの数はわずか5枚のみ。貧しい家庭を支える新聞配達の少年チャーリーもそのチケットを手にする事を夢見ているのだが、チケットは次々とお金持ちの子供たちの手に渡ってしまう。誕生日プレゼントとしてワンカのチョコレートを1枚貰ったチャーリーは、希望を胸にその包み紙を開いてみるのだが…。
原作はブラック・ユーモアの名手として知られる児童文学作家、ロアルド・ダールが1964年に発表した「チョコレート工場の秘密」。
日本ではティム・バートンが監督を、ジョニー・デップが主演を務めたリメイク版『チャーリーとチョコレート工場』(2005)の影に隠れてしまいまるで存在感がない本作だが、実は欧米圏では非常に人気があるらしい。公開時こそ興行的に失敗してしまったが、その後はカルト映画として今なお人々に広く愛されている。
内容としては、いかにもダールらしい風刺劇。「良い子にはプレゼントを、悪い子にはお仕置きを」というサンタクロース伝説に、「ヘンゼルとグレーテル」(1812)、「不思議の国のアリス」(1865)、そしてチャップリンの『モダン・タイムス』(1936)をブレンドしたかの様な暗黒メルヘン童話に仕上がっている。
お仕置きを受ける4人のクソガキ共のクソガキっぷりが、最高にクソガキなところが良い。食いしん坊、生意気、わがまま、テレビ中毒と、それぞれ違ったタイプのクソガキが自らの罪に相応しい末路を辿るところは、さながらちびっこ版『セブン』(1995)といったところか。子供たちに罰を与えながら、同時にそんな風に育ててしまった親の責任も追及するところが、意地悪でありながらも誠実である。
リメイク版では一応最後に子供たちの無事が確認出来るが、このオリジナル版ではそこのフォローはなし。果たして、全員生きてこの死の工場から抜け出す事が出来たのであろうか…。冷静に考えると罪と罰のバランスが釣り合っていない、ヘンデルもグレーチャウほどの酷いお話なのだが、そこはクソガキ共のクソガキレベルをMAXに引き上げることで上手く違和感を解消していると思います。
「良い子にしないとダメダメよ」という子供向けなメッセージの枠を越え、資本主義の醜さをこれでもかと露悪的に描いている点もユニーク。
街角に積み上げられたチョコレートのゴミは、食べられることなく捨てられたものたちの残骸だろう。他にもチョコレートが馬鹿みたいな値段で競売にかけられていたりとか、こんなん完全に現代やないっすか。2025年、マクドナルドのハッピーセットにポケモンカードのおまけがついた時、全くこれと同じ状況になったぞおい。というか、この映画では子供たちが熱狂の渦の中心だったが、現実では転売ヤーやYouTuberといったいい歳こいた大人たちが買い漁っていたのだから、現実の方が映画よりも遥かに酷い。
AIにチケットのありかを聞いて「ソンナンシルカタコ」と罵られる場面は、チャットGPTを「チャッピー」なんて呼んで可愛がる世相をぶった斬るかの様だし、本当に今を予見していたとしか思えない見事な先見性である。55年前に風刺されていたことをそっくりそのままなぞっている現代人の愚かさに涙が出ますよ……😢
ウィリー・ワンカを演じるのは、コメディ俳優のジーン・ワイルダー。本作の好演によりゴールデングローブ賞にノミネートされた。
ジョニー・デップが一目でわかる様なキチ…変人としてワンカを演じていたのと比較すると、ワイルダーはかなり抑えめ。一見するとマトモな人に見えるし、歌もお上手。「Come with me and you'll be in a world of pure imagination……」なんて綺麗な歌声を聞かせられ、てっきり常識人だと思いきや。徐々にギアが上がっていくその様は、むしろジョニデのワンカよりもキチ度が高い気がする。
ちなみに、ワンカの登場シーンはジーン・ワイルダー本人のアイデアだという。足が悪いのかな?と思わせておいてのクルリンパ、というタチの悪いジョークは、虚と実の区別のない彼のパーソナリティを見事に体現しています。このシーンだけでもう花丸あげちゃう💮ジョニデももう少しワイルダーを見習ってキャラを掘り下げるべし!
主役であるワンカが登場するまで50分近くかかる、かなりスロースターターな作品ではある。んー、なんか退屈🥱と思ったのも事実ではあるのだが、チャーリーたちが上空から街の景色を眺めるエンディングの多幸感は何ものにも代え難い。
「突然夢がかなった人はどうなったと思う?一生幸せに暮らしたとさ」……泣いたーー😭ここで流れるインストの「Pure Imagination」が、良いっ!!
SF映画を凌ぐ先見性、人間の愚かさを笑う風刺性、ジーン・ワイルダーの見事な演技、そして美しい楽曲の数々。これは確かに、カルト的人気になるのも頷ける。
リメイク版しか観たことない…というか、存在自体知らないという人も多いと思うが、そういう人にこそ本作を観て欲しい🍫