ヒルマ
2022年製作/120分/スウェーデン
原題または英題:Hilma
スタッフ・キャスト
- 監督
- ラッセ・ハルストレム
- 製作
- ヘレナ・ダニエルソン
- ラッセ・ハルストレム
- シガージョン・サイバッツォン
- 美術
- カタリーナ・ニークビスト・エールンルート
- 編集
- ディノ・ヨンサーテル
- 音楽
- ヨン・エクストランド
2022年製作/120分/スウェーデン
原題または英題:Hilma
乳白色の光。
丸いセードの石油ランプが、冒頭幾度も印象的に映る。
― それが物語の幕開けです。
昨年、国立近代美術館で対面したヒルマの絵も丸かった。
それは天然の貝や、葉っぱや、円弧や、明るい日輪の模様が刻まれていた。
そして彼女の絵は「ランプのように内側から光を放っていた」。
2つめの伝記映画だ。
前作は「見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界」2019年.ドイツ
ヒルマ・アフ・クリントの回顧展が世界中を巡り、いままさに彼女は美術界の仰天の中心にあるのだけれど。
・・だからそれを追って、この伝記映画も、どうせインスタントに急誂えで作られたのだろうね?と、僕は高をくくっていた。
いやいや、この映画はここまで丁寧に、実に細心の注意を払って作り込まれた良作です。
ヒルマがどのようにして「生命」や「輪廻」や「霊魂」の力に支えられて大作の制作に勤しみ、かたや「理屈」と「力」と「予算」にしか価値を見出せない古い価値観の男社会の中で、女たちが原始の力に目覚めていったのかが良くわかるストーリーです。
ルドルフ・シュタイナー。形無しでした。
東京に学園がありましたね。
◆日本での回顧展は、形こそグッゲンハイム美術館のような「外見での螺旋の神殿」は叶わなかったけれど、
しかし国立近代美術館の、
・どこまでも高い夜空のような漆黒の天井の、一番広い大広間に、
・その真ん中にこそ、今まで見たこともない巨大な柱を立てて、
・その柱の周りを巡りながら、カーバ神殿のごとくに!我われ観客にヒルマの大作を歩かせて巡らせたのは
あれは稀代の「展示プロデュースの快挙」であったと思う。
あそこでは
鑑賞ではなく礼拝が起こり、
理解ではなく霊界との交信が起こった。
ヒルマの気持ちが運営には通じたのだ。
( 僕は見た。絵の前で腕を十字に切ったり、絵に向かって手を振っている観客がいた)。
外側の壁への (=従来のどこにでもある展示の仕方ではなく)まさに「霊魂の内側へと」ヒルマを掲げようとした美術館スタッフ!
日本の美術館は、グッゲンハイムに勝って、ついにヒルマの求めた神殿の構想に、こんなにも見事に応えたと思う。
◆そして監督は、まさかのラッセ・ハルストレムでした。
渾身の思いで、よくぞ監督は同郷スウェーデンの偉人にここまで迫った。
不遇の中みまかり、ついに暗い地中から60年目に芽を吹いたヒルマの復活を、ハルストレムはスクリーンに輝かせました。
映画作りにおいて、絶えず「人とその運命の物語性」を活かしてきた、彼ならではの傑作です。
⇒ ヒルマを演じたトーラ・ハルストレムは、ラッセ・ハルストレムの実の娘。
晩年のヒルマは、ラッセ・ハルストレムの妻レナ・オリンが演じています。
家族ぐるみでそうせざるを得なかったのだろう監督の「はやる思い」が心に迫ります。
あの世で、ヒルマ本人がこの映画をどんなにか喜んでいるだろうかと想像します。