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ホラーが好きな事からアマゾンプライムで視聴しました。
原作は読んでいません。
私の第一印象では、この映画にはシナリオに大きな欠陥があります。それが、作品全体の崩壊に繋がっています。
以下にネタバレが含まれます。
作中には、災害により死去した男子学生の霊たちが登場します。また、その際に死亡した生徒会長の男子学生の霊も登場します。彼らの存在が大きな欠陥なのです。
この男子学生らは、「主人公が通う女子校が設立される前に、この土地で災害により校舎が全壊して50人の死者が出た」という出来事で亡くなったといいます。これはおかしくないでしょうか?
それほどまでの死者が出るレベルの災害ならば、毎年のように追悼セレモニーを行っているはずです。引っ越ししたばかりでもない、入学したての一年生でもない高校二年生の主人公は、その災害を一切知らず、初めて聞かされて驚きます。あまりにも不自然です。
また、生徒会長の男子学生はセリフの中で「昭和と平成の中間」に学生だったと述べています。
百歩譲って、戦前や戦後間もなくの木造建築の校舎ならばわかりますが、精密な耐震・耐火基準が設けられた1990年前後の鉄筋コンクリート作りの校舎が「全壊」するでしょうか?この作品の舞台は恐らく群馬県です。津波はありません。校舎の立地も、風景の映像から見ても大きな山などはなく、土砂崩れもありません。そもそも、教育施設を建てる基準はかなり厳しいです。地域住民の避難所にもなるので、被災の恐れがある土地に建てられる事はまずありえません。
千歩譲って、内陸部の平地で未曾有の災害があったとします。たった35年前の大きな災害を主人公が知らなかったとします。しかし、そんな土地に再び女子高を建築するでしょうか?
災害リスクの観点から見ても被害者遺族の心理から見ても、このような土地は追悼公園などになると思います。
まだまだ不自然さがあります。一万歩譲って、女子高を建てたとします。しかし、この女子高には「旧校舎」が登場します。(主人公達のクラスの文化祭の催し物が決まらず、過去の文化祭用の飾りを見るために登場人物たちが向かいます)
おかしくないでしょうか?35年前に、男子校が全壊している場所に女子高を建てたのに、なぜ旧校舎が建っているのでしょうか。この旧校舎はいつ、何のために建てられたのか。「災害で校舎が全壊して50人が死亡した」のではないのですか?設定が破綻しています。
十万歩譲って、2025年に三代目の新校舎が建ったと仮定しても、あまりにも不自然です。災害の直後にすぐさま二代目の校舎を建て、建ってから数十年で旧校舎にして、三代目の新校舎を建てますか?全てにおいて、おかしいです。
この設定の雑さに腹が立ってきます。現に、東日本大震災では津波により小学校の校舎が全壊して、生徒教職員含む84名の命が失われた実例があります。もしもこの災害被害を元ネタにしているのなら、あまりにも浅はかで不謹慎です。
この映画には「災害で死亡した男子学生は地縛霊となり、学校の敷地内から一歩も出られない」「賑やかな文化祭につられて活発になるが、自分達が死んでいることを実感して悲しい表情をする」という設定があります。
実際にあった災害死亡事例を元にしていたとしたら、遺族に対して非情な設定・演出です。フィクションのホラーのために、実在する被害者を連想させる演出は不快です。
災害を題材にすることはタブーではありませんが、題材の重さに対して扱い方があまりにも雑で、怒りがこみ上げます。
ここからは私の勝手な推理です。
原作を読んでいないので詳細はわかりませんが、人から聞いた話では原作漫画とは大きく設定が変えられていると聞きました。新任の男性教師にまつわるエピソードが大幅にカットされているそうです。
男性教師の役者は、人気男性アイドルです。そのために、アイドルのイメージが悪くなる内容をカットした。その代わりにアイドルの見せ場になり、若者にウケが良くSNS映えするダンスの要素を加えた。
しかしダンス要素はホラーとは相性がとことん悪い。ホラー要素がスカスカになってしまっために、別のホラー要素を追加する必要があった。
そこで、1999年の超有名ホラー映画「シックス・センス」から安易なコピーアンドペーストをした。「主人公の父親が家族から疎外されていると思わせて、実は死んでいた」というエピソードをぶち込んだ。そうしたら、今度はあまりにも「シックス・センス」のオチに偏り過ぎてしまった。
このままでは二番煎じと言われてしまうため、「共学と思っていたら実は女子高で、周りの男子学生は全員幽霊でした」という無理矢理なオチを思い付いた。
その理由付けに困り、「1989年から1990年頃に校舎が全壊する大きな災害があり、男子校の学生が50人死亡した」という、シナリオの根幹から崩壊するレベルのお粗末な設定をくっつけてしまった。
また、この「シックス・センス」からコピペした設定も破綻しています。主人公の女子高生は「ある日突然、幽霊が見えるようになったが、全力で幽霊を無視する」というのがこの作品の特徴だったはずです。
しかし一年前に過労で突然死した父親を、いつ頃から見えるようになったのかを明確に描写していません。見えるようになってから父親の霊に驚いた様子も描写されていません。
もしも父親が死亡してまもなく見えたならば、一年前から見えている事になるため、「ある日突然見えるようになった」にはならない。
もう既に幽霊が見えていたなら、高校二年生になった現在で遭遇する霊たちを「全力で無視する」という必然性もなくなる。
ここが本当に意味がわかりません。
そもそも父親のエピソードは必要だったのか?男子学生が校舎全壊で死亡したエピソードは必要だったのか?疑問符しか浮かびません。
ついでに言うと、女子高生の描写も不自然です。なんだか、平成中期の女子高生のような雰囲気です。「イケナイ太陽」の令和版MVみたいな世界観で、令和7年やアフターコロナの現代の空気感が全くありません。
アイドルや売り込みたい女優のイメージアップのため内容が空洞化して、エピソードを長引かせるため名作ホラーからのお粗末なコピペと穴埋め、そのために多くの人々が亡くなる災害を軽視するような雑な後付け設定。それらを上回る魅力もなく、ただただ不自然なシナリオ。
改めて、1999年の映画「シックス・センス」が見たくなりました。この映画の存在価値はそれだけです。低予算の子供騙し映画です。全くおすすめしません。