マティアス&マキシム

   120分 | 2019年 | PG12

「たかが世界の終わり」などで高く評価されるカナダの若き俊英グザビエ・ドランが、友情と恋心の狭間で揺れる青年2人の葛藤を描いた青春ラブストーリー。幼なじみである30歳のマティアスとマキシムは、友人の短編映画で男性同士のキスシーンを演じたことをきっかけに、心の底に眠っていた互いへの気持ちに気づき始める。婚約者のいるマティアスは、親友に芽生えた感情に戸惑いを隠しきれない。一方、マキシムは友情の崩壊を恐れ、思いを告げぬままオーストラリアへ旅立つ準備をしていた。別れが目前に迫る中、本当の思いを確かめようとするマティアスとマキシムだったが……。ドラン監督が「トム・アット・ザ・ファーム」以来6年ぶりに自身の監督作に出演し、主人公の1人マキシムを演じた。共演に「Mommy マミー」のアンヌ・ドルバル、「キングスマン ファースト・エージェント」のハリス・ディキンソン。2019年・第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

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映画レビュー

ホンダケイ

PRO

ホモソーシャルな関係の中の繊細さを、カナダの今とともに描いた意欲作

ホンダケイさん | 2021年7月29日 | PCから投稿

賛否両論で注目を集めた「たかが世界の終わり」「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」を撮り終えたドランが、友人たちと作ったリラックス感に溢れる青春ドラマ。「キスをしたら関係は変わるのか」をテーマに、それを男性同士に設定して描いた意欲作。地元のいつものメンバーによるパーティの騒々しさと、一方では各キャラクターが直面している外見、人種、階級などの差別や、複雑な家族や仕事などのリアルが描かれる。移民の国、フェミニズムの国で知られるカナダのケベック州が舞台だが、しばしば若い世代に向けられる「英語を使うな」という主張は、カナダ伝統のフランス語を使う人々=フランコフォンの矜持とこだわりが感じられて興味深い。LGBTをことさら意識させずに、男性同士の関係性の変化をスリリングかつ温かく描くドランの腕前に舌を巻きつつ、「ダークナイト」のベインの物まねをさりげなく挟むマニア向けの遊びにも感心させられた。