ヘルムート・ニュートンと12人の女たち

   93分 | 2020年 | PG12

一流ファッション誌で女性を撮り続けた写真家のドキュメンタリー

なぜ、女たちは裸になったのか?「ポルノまがい」「女性嫌悪主義」との議論も巻き起こした写真家の真実とは。

長年にわたって一流ファッション誌で女性を撮り続けた世界的ファッションフォトグラファー、ヘルムート・ニュートンを描いたドキュメンタリー。1920年にドイツで生まれたニュートンは、50年代半ばからヴォーグ誌などのファッション誌にユニークで衝撃的な作品を次々と発表。ワーグナー歌劇に登場する女神のような女性たちや、バロック趣味のインテリアに覆い尽くされた独特の作品世界は、着せ替え人形のようなモードを見慣れていた読者に強烈な印象を与え、賛否両論を巻き起こした。映画ではシャーロット・ランプリングやイザベラ・ロッセリーニといった女優たちをはじめ、米国版ヴォーグ誌の編集長アナ・ウィンター、モデルのクラウディア・シファーらのインタビューを収録。「20世紀を最も騒がせた写真家」とも呼ばれたニュートンの作品世界を、12人の女性たちの視点から捉え直す。

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映画レビュー

牛津厚信

PRO

生涯、挑発的であり続けた写真家が遺したもの

牛津厚信さん | 2020年12月29日 | PCから投稿

名を知らずとも、彼の撮った写真はきっと見たことがあるはず。その威力はどれも凄まじく、ビザールな状況やファッションでポージングを決めるモデルたちの姿は、見る者を挑発してやまない。作品を発表するごとに物議を醸してきた巨匠ニュートンとはいかなる人物なのか。このドキュメンタリーでは開始早々「密着しているからと言って、なんでも俺がぺらぺらと喋ると思うなよ」と口にしつつ、ニヤリと笑みを覗かせる。人柄は硬軟自在。その作風によって世間を驚かせ、時に激しい嫌悪すら引き起こしてきた彼だが、いたずらに人の心を煽るのではなく、激しいリアクションの先に、見る者に思考を促すという側面があったのも事実だ。それがニュートンの持ち味だった。ナチスドイツ時代にユダヤ人として幼少期から青年期までを過ごした逸話も興味深い限り。死してなお、作品を通じて人々を刺激し、テーマに対する思考を促し続ける彼。その「入門編」として面白く観た。

駒井尚文|映画.com編集長

PRO

エッチでカッコイイ写真をたくさん撮ったカメラマンの出自に納得

駒井尚文|映画.com編集長さん | 2020年12月9日 | PCから投稿

ヘルムート・ニュートンは、エッチでカッコイイ写真をたくさん撮ったカメラマンですが、私はこの映画を見るまで知りませんでした。彼がユダヤ人で、間一髪でホロコーストを逃れてたって事実を。イタリアのトリエステ経由で中国目指して逃げたが、シンガポールで足止め。その後オーストラリアに渡って、後の奥さんジューンと結婚したところがキャリアの始まりなんですね。偉大な仕事を成し遂げる偉大なユダヤ人が、ここにもいましたね。しかし、最近見た映画の中で、女性の裸がこんなにたくさん登場する映画はありませんでした。お腹いっぱい。