PARALLEL パラレル

   84分 | 2021年 | R15+

田中大貴監督の異色のスプラッターラブストーリー

心に傷を抱える少女とアニメの世界へ行きたい殺人鬼が織りなす心の交流を描きインディーズ映画祭を席巻!

スクリーン1

心に傷を抱える少女と、アニメの世界へ行きたい殺人鬼が織りなす心の交流を描いた異色のスプラッターラブストーリー。

幼い頃に両親から虐待されていた舞は、自身のつらい過去と折り合いをつけることができず、親友・佳奈とただ時間を忘れて遊ぶだけの毎日を送っていた。そんなある日、舞は美少女アニメキャラクターのコスプレ姿で殺人を繰り返している殺人鬼に遭遇する。舞に興味を抱いた殺人鬼は、正体を隠して彼女に接近。舞は自身の心の傷を、殺人鬼は自分の本当の姿を隠しながらも、2人は強くひかれあっていくが……。

舞役に「いつまでも忘れないよ」の楢葉ももな。監督は、大学の卒業制作として手がけたヒーロー映画「FILAMENT」が高く評価された田中大貴。第15回田辺・弁慶映画祭のコンペティション部門に出品され、映画.com賞を受賞。2022年9月、田辺・弁慶映画祭の受賞作品を上映する「田辺・弁慶映画祭セレクション2022」で上映。2023年7月に単独で劇場公開。

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監督: 田中大貴
脚本: 田中大貴
プロデューサー: 田中大貴
出演: 楢葉ももな芳村宗治郎菅沢こゆき十代修介ひとみちゃんふじおあつやミネオショウ灯敦生長谷川弘村田啓治鶴田雄大鈴木はるか中村柚陽篠崎健人古堅元貴掛川将希手塚利市松﨑イワオ幡乃美帆山日涼夏甲斐優風汰山城渉清水一哉井手尾敦
日本 / 日本語
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映画レビュー

和田隆

PRO

自主製作映画の極み、作家の内から溢れ出た結晶

和田隆さん | 2022年9月28日 | PCから投稿

 他人とのコミュニケーションがさらに希薄になった時代に、必然的に産み落とされた傑作か、それとも問題作か―。田中大貴監督が製作・脚本・撮影・照明・編集・特殊造形・VFXも兼任した本作は、自主製作映画の極みの一本と言え、作家の内から溢れ出た結晶である。

 ボカロ的な音楽とともに、劇中のアニメ作品はそれだけでしっかりと世界観が構築されている。また殺人描写や、過去の記憶、現実世界の日常の映像が、赤と青を基調とした色彩とともに押し寄せ、見る者を圧倒する。その一方で、懐かしい記憶や、静寂の風景と音楽、そして2人のどこか悲しげでありながら、愛を乞うような表情が、それまでの狂気との対比になっている。

 楢葉ももなが長編映画初主演とは思えない存在感で舞を演じ、殺人鬼の多面性を芳村宗治郎が繊細に演じ分けている。振り切ったスプラッター映画としてだけでも充分濃度は高いが、ラブストーリーの形をとりながら、現代社会の壊れた心、稀薄化した人間関係、そして現実世界での本当の自分とは何なのか、という田中監督の真の思いが、見終わった後に響いてくるだろう。