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ウッディ・アレン監督が、スペイン最大の国際映画祭であるサン・セバスチャン国際映画祭を舞台に、妻の浮気を疑う映画学の大学教授が体験する不思議な出来事を描いたコメディ。
ニューヨークの大学の映画学を専門とする教授で、売れない作家のモート・リフキンは、有名なフランス人監督フィリップの広報を担当している妻のスーに同行して、サン・セバスチャン映画祭にやってくる。リフキンはいつも楽しそうな妻とフィリップの浮気を疑っているが、そんな彼が街を歩くと、フェデリコ・フェリーニ監督の「8 1/2」の世界が突然目の前に現れる。さらには、夢の中でオーソン・ウェルズ監督の「市民ケーン」、ジャン=リュック・ゴダール監督の「勝手にしやがれ」の世界に自身が登場するなど、クラシック映画の世界に没入する不思議な体験が次々と巻き起こる。
アレン作品の常連俳優ウォーレス・ショーンがリフキンを演じるほか、ジーナ・ガーション、エレナ・アナヤ、ルイ・ガレルが顔をそろえる。
監督: ウッディ・アレン
製作: レッティ・アロンソン ハウメ・ロウレス
製作総指揮: アダム・B・スターン ハビエル・メンデス マリオ・ジャナーニ ロレンツォ・ミエーリ ロレンツォ・ガンガロッサ
出演: ウォーレス・ショーン / ジーナ・ガーション / ルイ・ガレル / エレナ・アナヤ / セルジ・ロペス / クリストフ・ワルツ
英題:Rifkin's Festival
スペイン,アメリカ,イタリア / 英語、スペイン語、スウェーデン語
(C)2020 Mediaproduccion S.L.U., Gravier Productions, Inc. & Wildside S.r.L.
映画レビュー
PRO
白湯のような映画(いい意味で)
村山章さん | 2024年2月29日 | PCから投稿
ネタバレ
クリックして本文を読む この映画の話をするのに、ウディ・アレンとディラン・ファローの問題についてはさておく(とはいえ自分なりに意見は持っているが)。といいつつ、告発のあとアメリカではほぼ干された状態でスペインで撮った映画、という裏事情は、当初の主演予定が降りてしまって急遽ウォレス・ショーンが登板したことからも伺えるわけで、ウォレス・ショーン主演作という地味さが興行的に足を引っ張っていることもわかる(ウォレス・ショーンは大好きな訳者ですけども)。
しかし内容といえば、実にウディ・アレンらしいいつもの「愚かなおっさんの惑いの話」なのだが、ちょっといつもとは勝手が違う。アレンは『カフェ・ソサエティ』でもなんともならない人生の悲哀みたいなものを前面に出していたが、こちらはもっとそこはかとない、どうじたばたしたところで人生は進んでいくしそのうち終わる、という達観した境地が基調にある。
よって、なにが起きようとも、主人公がバカげた失態を晒そうとも、大局的にはなんの影響もない。主人公夫婦は離婚もするし、それぞれのキャラクターの人生にはいろんな事情があることも匂わせているが、それもまた人生であり、とりたてて騒ぎ立てることでもないのだ。
と、結局アレンを取り巻く問題に話が戻ってしまうのだが、今の状況でここまでさらりと、白湯のように達観した映画を作ってしまうあたりに、アレンという作家の哲学性を感じずにはいられないのです。