ペルリンプスと秘密の森

   80分 | 2022年 | G

2013年の監督作「父を探して」が第88回アカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされたブラジル出身の気鋭監督アレ・アブレウが、巨人による破壊から魔法の森を救う謎の存在「ペルリンプス」を探す2人のエージェントの冒険を独自の色彩表現で描いた長編アニメーション。

テクノロジーを駆使する太陽の王国と、自然との結びつきを大切にする月の王国。それぞれの国の秘密エージェントであるクラエとブルーオは、巨人によってその存在を脅かされている魔法の森に派遣されている。魔法の森を守る唯一の方法は、かつて光としてこの森に入り込んだ「ペルリンプス」を見つけること。正反対の世界からやって来たクラエとブルーオは対立を続けていたが、共通の目的のため手を組むことに。しかしペルリンプスの手がかりを追う彼らを待ち受けていたのは、思いがけない結末だった。

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映画レビュー

杉本穂高

PRO

美しい色たちに囲まれる至福

杉本穂高さん | 2023年12月31日 | PCから投稿

アレ・アブレウ監督の作品でまず惹かれるのは、その色彩感覚。前作の『父を探して』でも発揮されていたその完成は、本作でさらに力強く発揮されている。この世界はまず、美しい色に囲まれている。その美しさの中でキャラクターたちはちっぽけな存在として、放り出されて、大冒険の旅に出る。
分断された世界に生まれた2匹のキャラクターたちが、イメージの世界ではつながり、仲間となれる希望、そして想像の世界の美。対して現実の理不尽さが重くのしかかり、対比的に描かれる。想像の世界を構築するのは現実逃避ではない、過酷な現実を生き抜くために必要なことだと本作を観ると思う。
テクノロジーと自然との関わりに翻弄されるキャラクターたちという物語設定は、スタジオジブリ的な主題だが、まちがいなく今日性の高いもの、今公開される意義の非常に高い作品と言える。
難しいテーマを扱っているようで、それは実は大変にシンプルなことで、シンプルに色彩の美しさに浸れる作品だ。この映像の美しさは世界の美しさを参考に作られているのだと素直に思える作品で、その感動が人に大切なことを気づかせてくれるはずだ。