あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。

   127分 | 2023年 | G

汐見夏衛の同名ベストセラー小説を福原遥と水上恒司の共演で映画化

戦時中の日本にタイムスリップした現代の女子高生と特攻隊員の青年の切ない恋の行方を描くラブストーリー。

スクリーン1

SNSを中心に話題を集めた汐見夏衛の同名ベストセラー小説を映画化し、戦時中の日本にタイムスリップした現代の女子高生と特攻隊員の青年の切ない恋の行方を描いたラブストーリー。

親にも学校にも不満を抱える高校生の百合は、進路をめぐって母親とケンカになり、家を飛び出して近所の防空壕跡で一夜を過ごす。翌朝、百合が目を覚ますと、そこは1945年6月の日本だった。通りがかりの青年・彰に助けられ、軍の指定食堂に連れて行かれた百合は、そこで女将のツルや勤労学生の千代、彰と同じ隊の石丸、板倉、寺岡、加藤らと出会う。彰の誠実さや優しさにひかれていく百合だったが、彼は特攻隊員で、間もなく命懸けで出撃する運命にあった。

NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」の福原遥が百合役、「死刑にいたる病」の水上恒司が彰役で主演を務める。「光を追いかけて」の成田洋一が監督を務め、福山雅治が主題歌を担当。

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監督: 成田洋一
原作: 汐見夏衛
脚本: 山浦雅大 成田洋一
出演: 福原遥水上恒司伊藤健太郎嶋崎斗亜上川周作小野塚勇人出口夏希中嶋朋子坪倉由幸松坂慶子
日本 / 日本語
(C)2023「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会

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映画レビュー

杉本穂高

PRO

逃げ出す特攻兵のエピソード

杉本穂高さん | 2024年2月29日 | PCから投稿

戦争を描く態度はどうあるべきか、という観点でSNS上では物議を醸していた作品だが、戦争を美化しているかといえば別にしていなかった。戦意高揚的な側面はなく、むしろ主人公の女子校生に「無駄死に」というキーワードを頻繁に言わせて、特攻を美化するような視点で描かれているとは思わなかった。
むしろ、特攻に選ばれた若い兵隊の一人が脱走しようとするのを、みんなで見逃すエピソードが心に残った。田舎に愛する人がいるから見逃してほしいという彼の願いをみんなで聞き入れる。その彼が現代の特攻博物館で、病気で出撃できなかったことにされていた。当時、本当のことは誰も報告できなかっただろうし、上層部的にも都合が悪かったんだろう。博物館に真相が書かれていない、つまり、歴史の記述には嘘があるということを踏まえている作品でもあった。
タイムスリップものは歴史改変に接続されやすいが、この主人公は過去を変えることは全くできず、たまたま当時の若者を愛し、理不尽に奪われる体験をする。大きな歴史のうねりに巻き込まれる無力な個人として主人公は設定されている。若い観客に「戦争は嫌だな」と思わせる力を持った作品ではないかと思う。