アウシュヴィッツの生還者
アウシュヴィッツからの生還者が明かす衝撃の実話を映画化!
「レインマン」のバリー・レビンソンが監督、「インフェルノ」のベン・フォスターが主演した究極のドラマ。
映画レビュー
PRO
アウシュビッツに実在した残酷なボクシング試合
清藤秀人さん | 2023年8月18日 | PCから投稿
いわゆるホロコーストに関する映画から、また新しい作品が誕生した。アウシュビッツでナチスのために同胞相手のボクシング試合を強いられ、試合に勝つことで処刑を免れた実在のボクサーが、アメリカに渡り、ロッキー・マルシアーノと対戦することで注目を浴びようとする。戦時中に別れた恋人を見つけるために。彼の名前はハリー・ハフト。リングアナは"アウシュビッツの生還者"と高らかに歌い上げる。
アカデミー受賞監督のバリー・レヴィンソンはハリウッドの"ブラックリスト"に載った実録小説をドラマチックでエモーショナルな映画に仕上げている。ホロコースト時代と14年後のハフトをカットバックで描くことで、逃れたくても逃れられない過去の記憶に苛まれるハフトの葛藤が伝わる構成だ。
これは、過去と未来に関する物語でもある。ハフトがいかにして生還者としてのサバイバルギルトから脱却し、未来へ歩み出していくのか。そこが見どころであり救いでもある。
地味だが完成度は高い。演出だけでなく、激しい減量と増量にトライして生還者ボクサーを演じるベン・フォスターの俳優としての献身ぶりは、もっと話題になっていいと思う。
PRO
ベン・フォスターにしか体現し得ない傷だらけの境地
牛津厚信さん | 2023年7月31日 | PCから投稿
『グッドモーニング、ベトナム』や『レインマン』など80年代から名作を手掛けるバリー・レビンソン監督が、たとえスピルバーグ のような多作ではなくとも、80歳を超えた今こうして新作を届けてくれるのは嬉しい(ただし撮影は2019年)。本作は近年の彼の作品で最も覚悟みなぎる一作と言っていいだろう。まずもって主人公のユダヤ人収容所内での壮絶な日々をモノクロームで描き、戦後のアメリカ時代を、古いアルバムを開くような淡い色合いで彩っていく芸術性の確かさ。その上、ボクシングの死闘があり、愛する人を巡るドラマがあり、心の内側には決して消え去ることのない傷跡が刻まれていたりと、様々な要素が絡まり合って人生を紡ぐ。全ての核となるのはベン・フォスターだ。彼の痛々しいほど徹底された肉体改造と、苦しみや悲しみを心の底から吐き出そうとする人間性がしみじみと胸を打つ。激しさと繊細さと愛を織り交ぜた、味わい深い一作である。
PRO
The Grimmest of Boxing Dramas
Dan Knightonさん | 2023年7月11日 | PCから投稿
Add Levinson's experience of Haft, a boxer who had to fight in the ring to survive, to this year's list of interesting films that explore the Holocaust. The oddball "friendship" between him and his SS manager as well as the pathological aftermath in his family life after war make for a fresh story in a film that welcomingly feels unusually 1990's. A film that shows it hasn't all been done before.