CLOSE クロース
第75回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞のルーカス・ドン監督長編第2作
親友との突然の別れ。無垢な少年が背負う罪の意識。世界中を涙に染めた、残酷な悲劇と再生を描いた物語。
映画レビュー
PRO
誰にでもある意図的に友達を避けた少年の日々が甦る
清藤秀人さん | 2023年7月26日 | PCから投稿
ルーカス・ドン監督が前作『Girl ガール』に続いて放った作品は、やはり他者との違いに悩み、苦しむ少年たちの葛藤を描いて入るものの、本作の方がより幅広い共感を得るかも知れない。なぜなら、子供の頃、大好きな友達がいたとする。でも、その友達との関係を周囲から奇異な目で見られ、それが嫌で関係を絶ってしまった、なんて経験は誰にでもあるはずだから。
主人公のレオはいつも一緒にいる、暮らしていると言ってもいい親友のレミとの関係を、クラスの女子から『カップルなの?』と聞かれたことが妙に恥ずかしくて、レミとの距離を置き始める。仲間外れになることを恐れて、新しい友達と仲良くし、それまでやってなかったアイスホッケーにもトライしてみる。そして、いつものようにレミの家に泊まっても、同じマットレスで寝ることがなくなった。何となく、あくまで何となくやったことが、果たして、どんな悲劇を引き起こすのか!?
子供だからとは言えない、残酷な仕打ちがもたらす予期せぬ出来事の顛末を描く映画は、やがて、少年らしい結末をレオに与える。その清々しさは半端ないのだが、注目すべきは子供たちを見守る大人たちの眼差しだ。生きていくこの世界には色々が出来事があって、色々な人々が重なり合って成り立っている。そこもまた、本作の視野の広さを象徴している。
PRO
末長く愛され、観る者の心を揺さぶり続けるであろう一作
牛津厚信さん | 2023年6月30日 | PCから投稿
少年たちの純真な思いに深く寄り添った傑作だ。舞台はベルギー郊外の自然に包まれた地域。いつも何の躊躇いもなく仲睦まじく戯れる13歳のレオとレミだったが、ある日、その様子をクラスメイトから揶揄されたことでレオの感情には戸惑いが生まれ、つい何となくレミを遠ざけてしまい・・・。ここからの展開に関してはできれば情報を入れずに臨んでほしいところ。何が起こるかは明かさないが、これはある意味、少年が自分の中の本心と切実に向き合おうとする物語であり、その心情を思うといまだに涙がこみ上げてくるほどだ。ドラマを彩る青々とした木々が胸に滲み入るように美しく、農園で収穫される花々の色味は、時として残酷に思えるほど鮮烈。その狭間を駆け抜けていく少年たちの表情と躍動が素晴らしく、脇で支える大人たちの演技にも心酔させられる。このルーカス・ドン監督による長編2作目は、今後、末長く愛され、観る者の心を揺さぶり続けるであろう。