別れる決心
第75回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞したパク・チャヌク監督のサスペンスドラマ
パク・ヘイルとタン・ウェイ共演、殺人事件を追う刑事とその容疑者で被害者の妻が対峙しながらひかれあう姿を描く。
映画レビュー
PRO
パク・チャヌクの歪んだユーモアが弾けた笑えるノワール
村山章さん | 2023年2月28日 | PCから投稿
映画の冒頭シーンから、どことなくシュールな可笑しさが漂っていて、ああ、パク・チャヌクという人は凄惨な映画を作るイメージがありつつも、常に変なユーモアを忘れない人だったよなと再認識。とにかく主人公男女の駆け引きが、バシバシと駒を叩きつけながら詰将棋をしているような感覚があり、特にタン・ウェイの男を翻弄しつつ惹きつける仕草の数々が、名人芸につぐ名人芸で、怖かったり笑ったり、やはり目が離せない役者だなと感心しっぱなし。全体の7割方は謎めきつつも笑えるコント、という見方が正しいかはともかくとして、パク・チャヌクの歪みがとてもオープンな形で現れたエンタメだと思う。
ただハングルと中国語話者の間のコミュニケーションのズレみたいな部分はどうしても字幕では伝わらりづらく(どっちの言葉もできるといいんですが)、吹替版がどう処理しているのかは気になるので、比べて観てみたい。
PRO
アイディアに貫かれた緻密な映像設計が、白昼夢のごときストーリーを奏でる
牛津厚信さん | 2023年2月26日 | PCから投稿
「パク・チャヌクといえばバイオレンス&ビザール」という僕のこれまでの低レベルな認識を、本作ははるか雲の上をゆく作家性と芸術性とでものの見事に覆してしまった。この映画には驚くべきアイディアで貫かれた映像設計があり、例えば取調室のカメラワークであったり、双眼鏡で覗いた先に自分の意識が入り込むくだりなど、パク・チャヌク流のギミックを感情表現の軸としながら、一つ不可思議なラブストーリーがおぼろげに形をなしていく。登場人物たちは互いの心を読み合いつつ、なかなか本心を語らないが、彼らの駆使するディバイスはいつも正直過ぎるほど正直だ。しかし一周も二周も回って、やっぱり真相というものは人間の内部にこそ刻まれているのかも。血は流れない。バイオレンスもない。だが時に暴力すぎるほど我々を波で洗い、白昼夢のように茫然とした気持ちにもさせる。ヒッチコックの『めまい』を彷彿とさせる斬新で儚いミステリーがそこにはある。
PRO
A Mature Film from Park
Dan Knightonさん | 2023年1月19日 | PCから投稿
Korea's most popular shocking thriller auteur presents his new grown-up film. The tale of a detective and his conflicted affection for a murder suspect, the story is elevated by Park's skill to show with scenes rather than words. Tang Wei's glamorous appearance is the latest on-screen crush. A little long and with many sides, it's not the most streamlined watch from Park; but it is a proper movie.