ジェントル・クリーチャー

   143分 | 2017年

【世界の奇妙な映画コレクション】ウクライナ映画アカデミー賞監督賞受賞

鬼才セルゲイ・ロズニツァ監督が全体主義国家の腐敗や不条理に翻弄される女性を、異様な緊張感で描いた寓話。

配信は終了しました。

ロシアの村はずれに一人で暮らす女性。ある日、収監中の夫に送った小包がただ「差出人に返送」と書かれ、何の説明もなく返送されてくる。ショックを受けた彼女は、理由を探ろうと辺境の地にある刑務所に向かう。刑務所には同じような境遇の人々が長蛇の列を作っていた。順番を待ち、差し入れを頼むが許可されず、抗議すると連行され、釈放されると今度は怪しげなブローカーたちが彼女につきまとう。やがて、駅で途方に暮れる彼女はある謎の屋敷へ連れていかれる。そこには軍の管理の下、様々な人々が集められていた…。

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監督: セルゲイ・ロズニツァ
脚本: セルゲイ・ロズニツァ
撮影: オレグ・ムトゥ
出演: バシリナ・マコブツェワバレリウ・アンドリウツァボリス・カモルジン
英題:A Gentle Creature
フランス,ドイツ,リトアニア,オランダ / ロシア語、フランス語
(C)SLOT MACHINE SARL, ARTE FRANCE CINEMA, LOOKS FILM & TV PRODUKTIONEN GMBH, STUDIO ULJANA KIM, WILD AT ART, GRANIET FILM, 2017

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映画レビュー

和田隆

PRO

説明を廃した異様な緊張感がほぼ全編にわたってみなぎる

和田隆さん | 2023年5月11日 | PCから投稿

 多くを語らない主人公の女性の疑問と怒りに満ちた表情と、説明を廃した異様な緊張感がほぼ全編にわたってみなぎり、見ている者は無意識に奥歯を食いしばっていることに気づくでしょう。全体主義国家の腐敗や不条理に翻弄されるとはいったいどういうことなのか。市民=個人の自由や人権よりも、国家や民族の意志や利害が優先される政治思想に対し、ウクライナ出身のロズニツァ監督の沸点ギリギリの熱い思いが伝わってきます。