愛する人に伝える言葉

   122分 | 2021年 | G

第47回セザール賞最優秀主演男優賞受賞のヒューマンドラマ

カトリーヌ・ドヌーブ×ブノワ・マジメル共演、ガンで余命宣告を受けた男とその母が穏やかに死と対峙していく姿を描く。

フランスを代表する名優カトリーヌ・ドヌーブと「ピアニスト」のブノワ・マジメルが共演し、ガンで余命宣告を受けた男とその母が穏やかに死と対峙していく姿を描いたヒューマンドラマ。

人生半ばにして膵臓ガンを患ったバンジャマンは、母クリスタルとともに、名医として知られるドクター・エデのもとを訪れる。ステージ4の膵臓ガンは治せないと告げられ自暴自棄になるバンジャマンに対し、エデは病状を緩和する化学療法を提案。エデの助けを借りながら、クリスタルはできる限り気丈に息子の最期を見守ることを決意するが……。

主人公に愛情を寄せる看護師を「モンテーニュ通りのカフェ」のセシル・ドゥ・フランス、主治医のドクター・エデを実際にガンの専門医であるガブリエル・サラが演じる。監督は「太陽のめざめ」のエマニュエル・ベルコ。2022年・第47回セザール賞でマジメルが最優秀主演男優賞を受賞。

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監督: エマニュエル・ベルコ
製作: フランソワ・クラウス ドゥニ・ピノ=バランシエンヌ
脚本: エマニュエル・ベルコ マルシア・ロマノ
出演: カトリーヌ・ドヌーブブノワ・マジメルセシル・ドゥ・フランスガブリエル・サラオスカー・モーガンルー・ランプロスメリッサ・ジョージクレモン・デュコル
英題:De son vivant
フランス / フランス語、英語
(C)2021 - LES FILMS DU KIOSQUE – STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINÉMA - SCOPE PICTURES. PHOTOS: LAURENT CHAMPOUSSIN.

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映画レビュー

牛津厚信

PRO

最後の瞬間をどう生き抜くかを真摯に見つめる

牛津厚信さん | 2022年10月16日 | PCから投稿

終末医療を題材にするということは、少なからず死と向き合うことを意味する。作り手にとっても、観客にとっても、それは一見、暗くて長いトンネルのように思えるが、この映画が静かに胸を揺さぶるのは、いかに死ぬかではなく、最後の瞬間を「どう生きるか」を描ききっているからだろう。それは決して孤独な戦いではない。ドヌーヴ演じる母もいれば、実際の医師のガブリエル・サラ演じる主治医、看護師たちがいる。それからブノワ・マジメル演じる主人公の「演技講師」という職業もまた深みをもたらす。若い俳優の卵たちに「いかに自分を解放して役を生きるか」を情熱的に教える彼の姿は、まさに自身がありのままに生命と向き合おうとする投影であり、なおかつ後進へ残すことのできる遺言にさえ思えてならない。そして何より医師の言葉が力強い。それは気休めではなく、空虚な希望でもなく、最後の瞬間を生き抜く知恵と覚悟と勇気をもたらしてくれるかのようだ。