Zola ゾラ
スタジオA24のゴージャスでスリリング―最もHOTで刺激的なロードムービー
アザイア・“ゾラ”・キングの148のツイートから生まれたリアル“SNS”ストーリーに全米大熱狂!
映画レビュー
PRO
かなりのクセの強さについていけるか?
牛津厚信さん | 2022年8月31日 | PCから投稿
かなり癖のある作品なのは最初から予感していたが、蓋を開けてみると想像以上に癖の強い映画だった。「本当にあった話」などと言われると、それにふさわしい驚きの詰まった意味深なプロットを期待するが、本作はそこらのスリラーに比べると意外とシンプルで直線的。それでいて妙に胸をざわつかせる質感に仕上げているのは、登場するキャラクターの個性、途中暴走するノリ、小鳥のさえずりのように絶え間なく響く電子音、そしてこれがSNS上にアップされた物語であるという事実。それこそ中盤には、同じ出来事を主人公とは別の登場人物の側から見た投稿が登場して、映画が一瞬だけいわゆる「羅生門」のような様相を見せる。また、これだけSNSをフィーチャーしながら、実際のスマホ画面を写すのではなく、自分たちがカメラと真向かいになって言葉を紡ぐのも異色といえば異色か。観客を選ぶタイプの作品だが、他で味わえない感性に貫かれていることは確かだ。
PRO
黒人と白人、性ビジネスとモラル、冒険と罠。対照的な要素の変容や逆転が常識のアップデートを促す
高森 郁哉さん | 2022年8月25日 | PCから投稿
ウェイトレス兼ストリッパーの黒人女性ゾラが、知り合ったばかりの白人女性ステファニから儲け話に誘われ、いざ遠征したら悪夢のような体験をする羽目に……という実話を連投したツイートがバズり、雑誌取材を受け、さらに映画化されるという、ごく短期間で有名人が生まれるSNS時代を象徴するかのような製作過程だ。
フロリダへの旅に同行するのは、ドライバーを兼ねる屈強な黒人男性Xと、ひょろっとして頼りない白人青年デレク。Xの支配下にあるステファニは、ファッションやメイクなどの外見から話し方(blaccentと呼ばれる黒人風のアクセント)まで、黒人文化の影響が色濃い。監督のジャニクザ・ブラボーも黒人女性であり、白人と黒人の力関係が逆転した状態で物語が進む本作は、ブラックスプロイテーション映画の現代的なバリエーションと位置付けることも可能だろう。
ゾラは旅先でストリップをして荒稼ぎするつもりが、それ以上のことを求められて窮地に陥る。そこでステファニとの性ビジネスに対するスタンスの違いが鮮明になっていくのだが、それぞれのモラルの基準という観点でも興味深い。
個人的な経験をからめて書くと、初めてアメリカを訪れた時はユタ州の田舎でしばらく滞在し、そこで仲良くなった白人男性シェフが後年アンカレッジに転居したときには2カ月ほど泊めてもらったこともあった。そうしたアメリカ人のオープンなところは本当に大好きだし、ユタ滞在時には何度かヒッチハイクもしたのだが、乗せてくれた人たちから「田舎ではいいけど、LAなどの大都会では絶対やるな」と釘を刺された。Japan PIというサイトで国別人口10万人あたりの年間行方不明者数を見ると、日本の69人に対しアメリカは180人だという。すぐに仲良くなったり、気安く車に乗ったり乗せたりといったオープンさがある反面、人身売買や殺人の標的になるリスクも高いということ。自らの“冒険譚”を後日ツイートできたゾラのケースは、不幸中の幸いと言えるのではないか。彼女も一歩間違えたら、行方不明者として闇に消えるか、死体で発見される可能性だってあったのだ。
ともあれ、これまで書いてきた要素に関して、常識をアップデートしなければと思わされる内容だった。
PRO
A24 Indie Pop with Tarantino Edge
Dan Knightonさん | 2022年7月26日 | PCから投稿
Zola presents itself as somewhat part of the pesky social media feedback loop we see in films portraying the effects of the Internet on story characters' lives; but as it segues deeper into its abyss, it unwinds into a vigorous crime underworld dark comedy. Original as a gritty look into the world of prostitution, a graphic montage is sure to instill the toughness of the job, even on a good day.