カモン カモン

   108分 | 2021年 | G

「20センチュリー・ウーマン」「人生はビギナーズ」のマイク・ミルズ監督が、ホアキン・フェニックスを主演に、突然始まった共同生活に戸惑いながらも歩み寄っていく主人公と甥っ子の日々を、美しいモノクロームの映像とともに描いたヒューマンドラマ。ニューヨークでひとり暮らしをしていたラジオジャーナリストのジョニーは、妹から頼まれて9歳の甥ジェシーの面倒を数日間みることになり、ロサンゼルスの妹の家で甥っ子との共同生活が始まる。好奇心旺盛なジェシーは、疑問に思うことを次々とストレートに投げかけてきてジョニーを困らせるが、その一方でジョニーの仕事や録音機材にも興味を示してくる。それをきっかけに次第に距離を縮めていく2人。仕事のためニューヨークに戻ることになったジョニーは、ジェシーを連れて行くことを決めるが……。「ジョーカー」での怪演でアカデミー主演男優賞を受賞したフェニックスが、一転して子どもに振り回される役どころを軽やかに演じた。ジェシー役は新星ウッディ・ノーマン。

全文を読む

映画レビュー

牛津厚信

PRO

愛おしさが胸いっぱいに広がっていく

牛津厚信さん | 2022年4月26日 | PCから投稿

ただただ愛おしさがあふれて止まらなかった。本作には観客の心をふっと和らげて、肩にのしかかった重みを軽くしてくれる力がある。私の場合、特にインタビューマイクを向けられる子供たちの言葉に胸打たれた。これからの未来を担う彼らが放つ、どんな優れた哲学者や思想家よりも人をハッとさせる考察や思索。それは期せずして叔父と共に取材旅行を続けることになる9歳の甥にも通じることで、とりわけ彼が刻んだ言葉はこの時代を生き抜く上で指針となりうるもの。少なくとも私はこの先ずっと忘れないだろう。さらには、ホアキン・フェニックス演じる叔父と甥が無邪気に戯れるシーンの素晴らしさ。互いに心から信頼しあえる間柄でなければあんな空気感は醸成できない。濃密で生き生きとした関係性がそっくりそのまま映像に焼き付いているからこそ感動はひとしおだった。愛情や温もりに満ちたホアキンにこれほど優しい気持ちにさせられるとは思ってもみなかった。