映画レビュー
PRO
変身ものアニメの系譜
杉本穂高さん | 2021年10月30日 | PCから投稿
外見を変える整形というテーマを、アニメーションでやるのは理にかなっている。外見の変化の可能性=可塑性は、まさしくアニメーションの特徴として挙げられるものだからだ。しかし、日本のアニメはあまり整形というテーマを扱ってこなかった。もっと広く「変身」ということで考えると、魔法少女ものに代表されるように数多く作ってきた。これもある種の変身ものである。
漫画では岡崎京子「ヘルタースケルター」や、(整形ではなくダイエットだが)安野モヨコの『脂肪という名の服を着て』など、本作と類似する作品をいくつか挙げられるように思う。
整形も変身の一種だ。まるで魔法のように一夜で外見を変えてくれる整形水。外見が変われば人生が変わり、望んだ人生が生きられる。変身願望とは、突き詰めれば、今の自分に不満があるということだろう。今の自分が冴えないから、フィクションでその変身願望を満たす。
変身願望は多くの人が持っている。社会がルッキズムを克服したとしても、その願望が消えることはないだろう。この映画は人間の尽きぬ願望に根差した部分に触れているから、心底怖い。
PRO
「PERFECT BLUE」を連想させる良い意味で意地悪なテイスト、吹替え版は原音にピッタリ
五所光太郎(アニメハック編集部)さん | 2021年9月27日 | PCから投稿
映画評(作品トップ→評論から読むことができます)執筆時は字幕版を見せてもらっていたので、吹替え版を劇場で見ました。主人公イェジ/ソレ役の沢城みゆき氏ら吹替え版キャストの演技は原音の感じともピッタリで、日本のアニメファンにとってはよりアニメ度が増す効果もあって大満足でした。声優にくわしい人が最後まで見ると、納得のキャスティングであることがより分かると思います。
今敏監督の「PERFECT BLUE」を連想したと書かれている感想をいくつか目にして、私自身も初見のときに似ているところがあるなと感じました。芸能の世界が舞台、「見る・見られる」の関係が執拗に映され主人公の自我が崩壊していく描写、通販番組のテレビ画面などの作りこみ、オチを含め全体に良い意味で意地悪なテイストが満載なところなど……。人間の暗部をグサグサえぐるように描き、それが楽しさに変わっていく秀逸な作品で、個人的にかなり好きな1作になりました。