映画レビュー
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「ポゼッサー」「TITANE」に連なる、身体とアイデンティティーをめぐるサスペンスホラー
高森 郁哉さん | 2022年4月15日 | PCから投稿
フランス発の「TITANE」に続き、今度はフィンランドからまたもエッヂの効いた怪作がやって来た。やはり傾向の近いブランドン・クローネンバーグ監督作「ポゼッサー」も英・カナダ合作であり、身体とアイデンティティーをめぐるサスペンスホラーが欧州映画界でちょっとしたトレンドになっているようで興味深い。
スマホ動画を使った私生活の生配信で“リア充”アピールに執心の母親と、期待に応えようと必死で一流の体操選手を目指す12歳の娘ティンヤ。そんな親子の関係性自体は珍しくないが、いかにも北欧らしい明るく洒落たデザインのインテリアと、ティンヤ役の新人シーリ・ソラリンナの天使のようなルックスに、まずたいていの観客が引き込まれるのではないか。
しかし、一見幸福そうな家族の家に、突然舞い込んだカラスが凶兆をもたらす。ティンヤが孵化させてしまう「それ」の造形が、いまどきのCGクリーチャーでなく、手作り風のアニマトロニクスによるものである点にも好感を持った。
冒頭で挙げた他の2作と同様、観客を選ぶ映画ではある。それでも、ジャンルのファンでちょっと変わった作品を求めている人なら、きっと楽しめるだろう。
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少女と一緒に寝ている大きな縫いぐるみのお腹で密かに育った不可解な卵。現れた生命の本能と成長する形に唖然
山田晶子さん | 2022年4月15日 | スマートフォンから投稿
素直で美しい少女が、張り詰めた思いを心に溜め込むたびに謎の卵が成長。卵が孵化してからは思いもよらない展開になる北欧発イノセントホラー映画。
2022年サンダンス映画祭プレミア上映にて話題を呼び、その後フランスで開催された第29回ジェラルメ国際ファンタスティカ映画祭ではグランプリを受賞した本作。
このように映画界隈で話題になったことよりも、私は本作の題名と広告の絵面が気になっていた。そして見終わった後は、結末に驚くと同時に、妙な納得感があった。
一言で言えば、期待を裏切るような作品ではなかった。
ホラー映画という枠組みには入るものの、特に前半は、北欧スタイルの部屋など美しい描写に目が行く。そしてホラー特有の恐怖よりも、無垢な少女に寄り添って見守るような感覚に引き込まれていく。
ただし、気分が悪くなりそうになる特殊な表現手法などの生々しいシーンもあり、動物や獣風の描写に過敏な人は要注意。さらに、ストーリーは悲しくなるほど恐ろしい面もある。
完璧な幸せの形を自己流に貫く母親と、健気に慕う美しい娘の間で起こっていく変化とは?
1200人のオーディションから選ばれたシーリ・ソラリンナ(主人公)の、少女らしい美しさと演技力は今のうちに見ておかないと後悔するようなレベルであった。