ドライブ・マイ・カー インターナショナル版

   179分 | 2021年 | R15+

第94回アカデミー賞国際長編映画賞受賞!

本来のバージョンのインターナショナル版(日本語音声)を配信。※劇場公開版とは一部編集とレーティング表記が異なります。

配信は終了しました。

村上春樹の短編小説集「女のいない男たち」に収録された短編「ドライブ・マイ・カー」を、「偶然と想像」でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した濱口竜介監督・脚本により映画化。舞台俳優で演出家の家福悠介は、脚本家の妻・音と幸せに暮らしていた。しかし、妻はある秘密を残したまま他界してしまう。2年後、喪失感を抱えながら生きていた彼は、演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島へ向かう。そこで出会った寡黙な専属ドライバーのみさきと過ごす中で、家福はそれまで目を背けていたあることに気づかされていく。主人公・家福を西島秀俊、ヒロインのみさきを三浦透子、物語の鍵を握る俳優・高槻を岡田将生、家福の亡き妻・音を霧島れいかがそれぞれ演じる。2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、日本映画では初となる脚本賞を受賞。ほか、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の3つの独立賞も受賞した。※本作品は、インターナショナル版での配信となります。劇場公開時とレーティングが異なりますのでご注意くださいませ。

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監督: 濱口竜介
原作: 村上春樹
脚本: 濱口竜介 大江崇允
出演: 西島秀俊三浦透子霧島れいかパク・ユリムジン・デヨンソニア・ユアンペリー・ディゾンアン・フィテ安部聡子岡田将生
日本 / 日本語
(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

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映画レビュー

五所光太郎(アニメハック編集部)

PRO

多言語の読み合わせで物語が少しずつ動いていくワークショップ

五所光太郎(アニメハック編集部)さん | 2022年3月30日 | PCから投稿

約3時間ある映画ですが、冒頭から引きこまれて楽しめました。ふだん邦画を見ない方にもお勧めできます。
西島秀俊氏演じる主人公が広島の国際演劇祭に行くまでの前段、演劇祭でのワークショップ、演劇祭で出会った運転手みさき(三浦透子)との旅、の大きく3つに分けられて、中盤のワークショップ部分が特に面白かったです。手話をふくめた多言語で、チェーホフの戯曲の読み合わせが淡々と続くなかで少しずつ物語が動いていくのにドキドキさせられました。

大塚史貴

PRO

2020年代を代表する、“事件”ともいえる1作

大塚史貴さん | 2022年3月30日 | PCから投稿

公開前、公開直後、そしてアカデミー賞授賞式を終えたこのタイミングで改めて鑑賞。
同時代を生きることに幸せを感じる映画人は数多くいるが、「ドライブ・マイ・カー」もまたその1つ。
濱口竜介という映像作家の緻密さを見事に理解して体現してみせた、西島秀俊をはじめとする俳優陣の芝居もまた見事というほかない。
この後、どんな光景を見せてくれるのか、並走を続けたいと観る者に思わせることができる1作ではないだろうか。

杉本穂高

PRO

付け髭を外す芝居にしびれた

杉本穂高さん | 2021年9月30日 | PCから投稿

序盤にある、楽屋裏のシーンにすごく惹かれる。西島秀俊が付け髭をつけている。これがすごく印象的である。鏡がおいてある、それに向かいながら、付け髭をピりリと外す。この芝居に異様に惹かれてしまった。要するに、この映画は男が付け髭を外す映画なのかと思った。髭が男の威厳やらなにやらを象徴するのかどうかわからないが、ただ付け髭を外すという、楽屋裏での何気ないひとコマがとても強烈なイメージをはなっているように思えてしまった。実際、その印象は間違いではなかった。男が威厳とか強さをを捨てて弱い自分を見つめなおす物語であったように思う。
広島での芸術祭における、主人公の芝居作りの過程は興味深いものだった。これは濱口監督のメソッドだと思うが、途中で役者の1人が「私たちはロボットじゃない」と言い出す。ただ、感情を込めずに台詞を喋らせる本読みを濱口監督も行っているのだが、実際に言われたことがあるのだろうか。
三浦透子が素晴らしい。どこか落ち着いて考えられる場所はあるかと聞かれた時に、車を叩く仕草のこなれた感じ。あの仕草に、この人は本当に車の運転が上手いんだろうなと思わせる、すごい説得力があった。

高森 郁哉

PRO

演劇要素や多言語に没入できないもどかしさ

高森 郁哉さん | 2021年8月22日 | PCから投稿

かつて愛読した村上春樹の短編を、国際映画祭常連の濱口竜介監督が映画化、ということで期待値は高かった。チェーホフやベケットといった現代演劇に通じている観客のほうがより深く味わえるのだろうと想像する。正直に告白すると、中盤以降かなりの尺を占める家福と俳優たちによる「ワーニャ伯父さん」の稽古場面を心から楽しめず、多言語が行き交うこともあってか、作品世界に没入しきれない自分をもどかしく思った。

村上小説の空気感はかなりうまく再現できていたように思う。家福役の西島秀俊とみさき役の三浦透子が交わす言葉と心の距離感も精妙に表現されていた。家福の亡き妻・音役・霧島れいかに関しては、車中でたびたび流れる録音済みの朗読で聴かれる声のトーンは耳馴染みがいい。ただし、若手のイケメン俳優・高槻(岡田将生)と浮気もするやり手の脚本家という音の人物設定と霧島の話し方に微妙なずれがある気がする。ドラマ「24 JAPAN」でテロ対策ユニットの新班長を演じた時も、切れ者であるはずの役と霧島のどこかのんびりした話し方に違和感を覚えた。彼女は颯爽としたインテリや切れ者のキャラクターよりは、品のいいおっとりした女性の役を演じるほうがはまる気がするのだがどうだろうか。