ミッドナイト・トラベラー

   87分 | 2019年

サンダンス映画祭ワールドシネマドキュメンタリー審査員特別賞受賞

安住の地を求めて旅する難民家族が3台のスマホで自らの旅を撮影した前代未聞のセルフドキュメンタリー。

配信は終了しました。

安住の地を求めてアフガニスタンからヨーロッパを目指す難民家族がスマートフォンで自らの旅路を撮影したドキュメンタリー。2015年、映像作家ハッサン・ファジリは、アフガニスタンの平和に関するドキュメンタリーを制作する。しかしその作品が国営放送で放映されると、その内容に憤慨したタリバンは出演者の男性を殺害、ハッサンにも危険が迫る。ハッサンは家族を守るため、妻と2人の娘を連れてヨーロッパまで5600キロの旅に出ることを決意。一家はその旅路を、3台のスマートフォンで記録する。様々な困難に直面しながら命懸けの旅を続ける彼らの姿を通し、故郷を追われて難民になるとはどういうことか、その現実を映し出す。2019年のサンダンス映画祭ワールドシネマドキュメンタリー審査員特別賞、山形国際ドキュメンタリー映画祭インターナショナルコンペティション部門優秀賞など、世界各国で映画賞を受賞した。

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監督: ハッサン・ファジリ
製作: エムリー・マフダビアン スー・キム
製作総指揮: サリー・ジョー・ファイファー ジャスティン・ナガン クリス・ホワイト
出演: ナルギス・ファジリザフラ・ファジリファティマ・フサイニハッサン・ファジリ
英題:Midnight Traveler
アメリカ,カタール,カナダ,イギリス / アラビア語、英語、トルコ語、ブルガリア語
(C)2019 OLD CHILLY PICTURES LLC.

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映画レビュー

高森 郁哉

PRO

長女が歌うマイケル・ジャクソンの『They Don't Care About Us』に監督の意図が重なる

高森 郁哉さん | 2021年9月20日 | PCから投稿

本作については当サイトの新作評論に寄稿したので、ここでは補足的な観点で書いてみたい。

まず、この「ミッドナイト・トラベラー」が3台のスマホで撮影されたことが強調されているけれど、映像記録デバイスとしてだけでなく、支援者との連絡、情報収集、それに子供たちのエンタメ(遊びや気晴らし)の道具としてスマホが大いに役立っていることも見逃せない。映像は最終的に300時間にも及んだそうだが、ハッサン・ファジリ監督はSDカードに記録した映像データを各国の協力者を介して米国のプロデューサーに送り、データ到着を確認した後にカードのメモリを消去してまた撮影していったという。ブロードバンド回線など望むべくもない過酷な旅でも、スマホとモバイル回線が使えて支援者がいればこんな映像製作が成立するという好例だろう。

長女ナルギスが難民キャンプ内の狭い部屋で、スマホで再生するマイケル・ジャクソンの『Black Or White』と『They Don't Care About Us』のPVに合わせて歌い踊るシーンがある。どちらも差別される側、存在を無視される側からの視点で訴える歌だが、監督はこの2曲の場面を入れることで、イスラム教徒の側面もあるアフガニスタン難民が移動先の外国で受ける扱いを重ねたのだろう。

「奴らは俺たちのことなんか気にしない」とマイケルは歌う。国際社会は、そして私たち一人ひとりは、難民のことを気にかけているだろうか。そんな問いかけが込められているように思う。

Dan Knighton

PRO

A Family's Journey to the Edge of Hell

Dan Knightonさん | 2021年8月11日 | PCから投稿

I often ponder what my purpose in life is, but I seldom take the time to acknowledge that for an entire region of people on this planet, an immediate concern is finding a home with running water that isn't getting artillery shelled. Midnight Traveler is the smartphone-told tale of a filmmaker's escape from the Taliban to Europe. Perhaps the best film showing the crisis from the inside out.