東京自転車節

   93分 | 2021年

コロナ禍を生き抜くリアル・ロードドキュメンタリー

「ひいくんのあるく町」の青柳拓監督がコロナ禍によって生まれた「新しい日常」とは何かを問いかけていく。

配信は終了しました。

「ひいくんのあるく町」の青柳拓監督が、2020年緊急事態宣言下の東京で自らの自転車配達員としての活動を記録したドキュメント。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため緊急事態宣言が発出された2020年の東京。自転車配達員として働くことになった青柳は、スマートフォンとGo Proで自身の活動を記録していく。セルフドキュメンタリーを踏襲しながら、SNS動画の感覚でまとめあげた日常を記録した映像を通し、コロナ禍によって生まれた「新しい日常」とは何かを問いかけていく。

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監督: 青柳拓
構成: 大澤一生
プロデューサー: 大澤一生
出演: 青柳拓渡井秀彦丹澤梅野丹澤晴仁高野悟志加納土飯室和希齊藤佑紀林幸穂加藤健一郎
日本 / 日本語
(C)ノンデライコ/水口屋フィルム

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映画レビュー

杉本穂高

PRO

洗練されたシステムの奴隷にされてしまう人間

杉本穂高さん | 2021年7月31日 | PCから投稿

これは必見。コロナ禍で仕事のなくなった若い映像作家が、出稼ぎ目的でウーバーイーツをやることにして、最初(2020年4月)の緊急事態宣言下の東京を自転車で駆け巡る。出稼ぎでやっているのに全く金がたまっていかない。雨の日もカンカン照りの日でもせっせと自転車を漕いでいく。でも、その日暮らしがやっと。
その日暮らしになってしまうのは主人公自体の駄目さもある。もっと計画的にふるまえればもう少しお金貯まるんだろうという気もするが、この世の中はだれもが合理的に動けるわけじゃない。
というか、ウーバーイーツみたいな「便利な」サービスは合理化の権化のようなところがあると思う。合理的というのは、今の社会では「人間的」なものよりも価値のあるものになってしまっている。人間くさい主人公がそんな合理的なものの「奴隷」にされてしまう現実がありありと映し出されている。
ウーバーイーツの配達をやりすぎて、最後の方はちょっと正気を失ったような感じになっていく。チャップリンの『モダン・タイムス』にも通じる皮肉と狂気が宿った作品だ。チャップリンの時代よりも、現代はさらにシステムは洗練され、人間はシステムの一部として振舞わないといけなくなっている。青柳監督のような人間くささは失われるしかないのか、非常に鋭い問いかけをしている作品だと思う。