フレンチアルプスで起きたこと

   118分 | 2014年 | G

フランスのスキーリゾートにやってきたスウェーデン人家族の状況が、ある事件をきっかけに一変する様をブラックユーモアを交えて描いたドラマ。2014年・第67回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞するなど、各国の映画祭や映画賞で高い評価を獲得。日本では第27回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門で「ツーリスト」のタイトルで上映されている。スマートなビジネスマンのトマス、美しい妻のエバ、そして娘のヴェラと息子のハリーは、一家そろってフレンチアルプスにスキー旅行にやってくる。しかし、昼食をとっていた最中、目の前で雪崩が発生。幸い大事には至らなかったが、その時に取ったトマスの行動が彼のまとっていた「理想的な家族の父親像」を崩壊させ、妻や子どもたちから反発や不信を買って家族はバラバラになってしまう。

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映画レビュー

Dan Knighton

PRO

Introspective Art Thriller

Dan Knightonさん | 2020年10月20日 | PCから投稿

This story of a family's deconstruction in a mountain resort is a Neo-Shining master work with all the finer points of European arthouse. A literary observation of the human psyche when confronted with a life-threatening event. There's humor and sarcasm in its pessimistic tale--a stalker-like hotel janitor feels like a caricature of the director's own insecurities. It makes lemonade out of lemons.

杉本穂高

PRO

人間の本性をあけすけに暴くユーモア

杉本穂高さん | 2018年5月29日 | PCから投稿

知的興奮、というのはこういう映画のためにある言葉だと思う。人間は追い詰められた時にその本性を現すが、まさに本性を表してしまった人間への見方が一変する体験を見事に描いている。

頼れる父親だったはずの男が、いざ雪崩という危機が起きると家族を置いて一人で逃げてしまう。そこから家族の絆に日々が入る。おそらく本人もそんな危機に直面するまでは、自分がそんな人間だと思いもしなかったのだろう。良き父親、良き夫という「仮面」を生命の危機によって強引に剥がされてしまった男の惨めな姿。観ていてつらく滑稽だ。

リューベン・オストルンド監督の観察眼は、まるで人間を昆虫を観察するかのように見つめる。何かの実験をするかのように、こういう状況に置くと人間がどんな行動を取るのか、というような冷徹な視線がある。この距離感がコメディに最適だ。