春江水暖 しゅんこうすいだん

   150分 | 2019年 | G

【先行独占配信最終日】第72回カンヌ国際映画祭批評家週間クロージング作品

横移動スクロールの超ロングテイクや壮大なロングショットに息を呑む、現代の山水絵巻に驚嘆の傑作

配信は終了しました。

大河・富春江が流れる街・富陽の美しい自然を背景に、変わりゆく中国社会の中で懸命に生きる大家族の四季を描いた人間ドラマ。中国のグー・シャオガン監督の長編デビュー作で、2019年・第72回カンヌ国際映画祭批評家週間のクロージング作品に選ばれた。再開発のただ中にある杭州市の富陽地区。顧家の家長である年老いた母の誕生日を祝うため、4人の息子や親戚たちが集まる。しかし祝宴の最中に母が脳卒中で倒れ、命は取り留めたものの認知症が進み、介護が必要になってしまう。飲食店を営む長男、漁師の次男、ダウン症の息子を男手ひとつで育てる三男、気ままな独身生活を楽しむ四男ら、息子たちは思いがけず、それぞれの人生に直面することになる。日本でも2019年・第20回東京フィルメックスのコンペティション部門で審査員特別賞を受賞。

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映画レビュー

牛津厚信

PRO

この長回しの映像美には圧倒される

牛津厚信さん | 2021年1月31日 | PCから投稿

江南の都市、富陽に富春江という大河が流れている。大規模な再開発によって日々姿かたちを変えるこの地で、四季折々の自然の息吹を胸いっぱいに吸い込みながら生きる一族の物語。2時間半という長尺ながら、本編が始まればその長さにも納得がいく。何しろ本作はワンシーン、ワンシーンが超長回しで撮られ、そのいずれにも驚異的な映像美とカメラワークが内包されているのだ。とりわけ大河や山々が映り込むショットは圧巻のひとこと。古より景勝地として愛されてきた土地だけに、10分を超えても途切れることのない映像に身を委ねながら、いつしか自分が山水画の繊細な筆遣いを地道に目でたどっているかのような思いすら込み上げてくる。この悠久の時間の中で、時に人間はとてもちっぽけな存在にも見える。だがそれでもなお、様々な困難と直面しながら歯を食いしばって生きる姿がとても切なく、愛おしい。まだ30代序盤というシャオガン監督の今後が楽しみだ。