春江水暖 しゅんこうすいだん
【先行独占配信最終日】第72回カンヌ国際映画祭批評家週間クロージング作品
横移動スクロールの超ロングテイクや壮大なロングショットに息を呑む、現代の山水絵巻に驚嘆の傑作
映画レビュー
PRO
この長回しの映像美には圧倒される
牛津厚信さん | 2021年1月31日 | PCから投稿
江南の都市、富陽に富春江という大河が流れている。大規模な再開発によって日々姿かたちを変えるこの地で、四季折々の自然の息吹を胸いっぱいに吸い込みながら生きる一族の物語。2時間半という長尺ながら、本編が始まればその長さにも納得がいく。何しろ本作はワンシーン、ワンシーンが超長回しで撮られ、そのいずれにも驚異的な映像美とカメラワークが内包されているのだ。とりわけ大河や山々が映り込むショットは圧巻のひとこと。古より景勝地として愛されてきた土地だけに、10分を超えても途切れることのない映像に身を委ねながら、いつしか自分が山水画の繊細な筆遣いを地道に目でたどっているかのような思いすら込み上げてくる。この悠久の時間の中で、時に人間はとてもちっぽけな存在にも見える。だがそれでもなお、様々な困難と直面しながら歯を食いしばって生きる姿がとても切なく、愛おしい。まだ30代序盤というシャオガン監督の今後が楽しみだ。