すばらしき世界

すばらしき世界

4.0    126分 | 2021年 | G

第56回シカゴ国際映画祭最優秀演技賞と観客賞受賞

西川美和監督と役所広司が念願のタッグを組み、実在した男をモデルに「社会」と「人間」の今をえぐる問題作。

すばらしき世界

すばらしき世界

4.0 126分 | 2021年 | G

第56回シカゴ国際映画祭最優秀演技賞と観客賞受賞

西川美和監督と役所広司が念願のタッグを組み、実在した男をモデルに「社会」と「人間」の今をえぐる問題作。

プレミアムスクリーン
配信期間: 2021年6月18日(金)~ 8月5日(木)

『ゆれる』『永い言い訳』の西川美和監督が役所広司と初タッグを組んだ人間ドラマ。これまですべてオリジナル脚本の映画を手がけたきた西川監督にとって初めて小説原案の作品となり、直木賞作家・佐木隆三が実在の人物をモデルにつづった小説「身分帳」を原案に、舞台を原作から約35年後の現代に置き換え、人生の大半を裏社会と刑務所で過ごした男の再出発の日々を描く。殺人を犯し13年の刑期を終えた三上は、目まぐるしく変化する社会からすっかり取り残され、身元引受人の弁護士・庄司らの助けを借りながら自立を目指していた。そんなある日、生き別れた母を探す三上に、若手テレビディレクターの津乃田とやり手のプロデューサーの吉澤が近づいてくる。彼らは、社会に適応しようとあがきながら、生き別れた母親を捜す三上の姿を感動ドキュメンタリーに仕立て上げようとしていたが……。

全文を読む

監督: 西川美和
原案: 佐木隆三
脚本: 西川美和
出演: 役所広司仲野太賀六角精児北村有起哉白竜キムラ緑子長澤まさみ安田成美梶芽衣子橋爪功
日本 / 日本語
(C)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

全て見る

映画レビュー

杉本穂高

PRO

役所広司がチャーミングだ。ヤクザをこんなにチャーミングに描いた作品...

杉本穂高さん | 2021年3月31日 | PCから投稿

役所広司がチャーミングだ。ヤクザをこんなにチャーミングに描いた作品は今までにどれくらいあったんだろうか。
長い刑期を終えて、出所した男を待っていたのは厳しい社会の現実だった。すっかり世相は変わり、暴力団に対して厳しい世の中になっている。短気な性格の主人公もなんとか自分を抑えながら生きているが、時に暴発する。路上で絡んできたヤンキー連中をボコボコにした時に役所広司の無邪気さがすごい。衝動的に(ある意味でそれは自分らしく振舞っているということでもある)暴力をふるう主人公がどこか子どもっぽく、かわいく見えるように西川監督は撮っている。なかなかすごい発想である。性根は真っすぐで、仁義に厚いとかそういう面もあるにはあるが、それにしても暴力衝動に駆られた時にその無邪気が最大限に発揮されているというのがすごい。
2020年代は、この映画の主人公のような人物が、自分らしく生きられる時代ではなくなった。それでも人は生きていかねばならない。いい奴もいれば悪い役も相変わらずいる。時代に居場所を奪われた人はどうすればいいのか。自分を殺して社会に合わせることが良いことなのか。本作を観た人がそれぞれの人生で考えねばならないことだ。

清藤秀人

PRO

これは「役所広司を楽しむ映画」

清藤秀人さん | 2021年2月17日 | iPhoneアプリから投稿

殺人罪で13年の刑期を終え、出所して来たのは、時代の変化に対応できず、何事にもすぐにキレてしまう三上なる男。しかし、見た目は荒くれ者でも、彼は他人の不幸を見逃せない実直で正義感に溢れる人物であった。だから、身元引受人の弁護士夫婦や、TVプロデューサーの指示で三上の出所後の動向を撮影しようとする小説家志望の青年や、三上を万引き犯と勘違いしたことをきっかけに親しくなるスーパーマーケットの店長等、周囲の人々を自然に巻き込み、そして、魅了していく。やがて、気付くのは、なぜ、三上のような人間が犯罪を犯し、人生の時間を奪われ、社会復帰に苦労しなければならないのか?という疑問だ。それは同時に、今の日本社会を構築している我々への問いかけでもある。30年以上前に出版された佐木隆三の原作を現代に置き換えた物語は、細部に変更を加えて、2021年の日本人に向けて痛烈なメッセージになっている。「果たしてここは、すばらしい世界なのか?」という。秀逸な社会派人間ドラマであることは間違いない。でも実のところ、三上を演じる役所広司を見ているだけで、知らないうちに時間が過ぎ去ってしまう、言うなれば、「役所広司を楽しむ映画」でもある。ここ何十年もの間、高い頻度で日本映画に貢献してきた稀代の演技派が、それでもまだ、物凄く面白くて新鮮でさえあるという事実の方が、映画そのものより衝撃的なくらいだ。

細野真宏

PRO

タイムスリップしたような主人公の境遇が現代社会の生きづらさを巧く表す。役所広司ありきの作品!

細野真宏さん | 2021年2月10日 | PCから投稿

「ゆれる」(2006年)で❝期待できる監督❞となり、「ディア・ドクター」(2009年)でこれは凄い監督が現れたと思った西川美和監督の最新作。
実は、残念ながら私は「ディア・ドクター」以降の2作についてはあまり響かなかったのが本音でした。
オリジナル脚本にも限界はあるので、本作では長編映画で初の原作物の作品となりました。原作の主人公は「実在の元殺人犯」で、本作では舞台を約35年後の「現代」に置き換えるなどしています。
その結果、「今のヤクザ」には、様々な法律で縛られている背景があるため、生きづらさを、より見せやすくすることに成功していました。
生活保護の現実や、住まい、仕事など様々なシーンでの生きづらさを描いています。
とは言え、本作は不思議と❝湿っぽい❞感じの作品ではなく、常に❝面白み❞が存在しています。これは主人公のキャラクターが大きく、役所広司でなければ、ここまでの面白さや凄みなどのある人物像を作り上げることができなかったと思います。
そして、長澤まさみがテレビのプロデューサー役で登場し、そんな13年の刑期を終え「社会に適応しようとあがく主人公」を追った番組を作ろうとします。
最初は、企画を立てた長澤まさみと、フリーディレクター役の仲野太賀が2人で追いかけていきますが、プロデューサーである長澤まさみは比較的早く仲野太賀に押し付けるなど、こんなところでも現実社会を投影しています。
主人公が終盤で行きついた仕事先は介護施設でしたが、ここでもやはり生きづらさは多くあります。ただ、一方で❝あたたかさ❞もあり、最初は意味不明な映画タイトルですが、ラストで意味が分かると思います。
西川美和監督の新たな挑戦となった本作を、私は成功だと感じました。

山田晶子

PRO

心がえぐられる「すばらしき世界」

山田晶子さん | 2021年2月9日 | スマートフォンから投稿

西川美和監督が、実在の男を描いた昭和の原作(身分帳)に惚れ込み、時代を「今」に置き換えた本作の主人公(三上)は、役所広司。西川美和監督が描きたかった「生きづらくて、優しい」社会を生き抜く三上という人となりがストレートに伝わり、彼の「優しさ、時々狂気さ」が見え隠れする言動は見る側の心に突き刺さる。
三上は、困っている人を放っておけず、「これはいけないことだ」と思うと、つい当事者のために罵声や暴力を正当化してしまう元殺人犯。しかし、ベースは「優しさ」から起こっていることが作品を通して感じられるため、厳しい描写よりも人間の温かみを感じるところが本作の見どころの一つとなっている。
三上の行動を軸に、「社会に対する疎外感」を伝える西川美和監督(脚本)の視点がリアルで、ユーモアもあり泣けてくるうえに、改めて「社会」と「人間」を考える架け橋のような映画に仕上がっている。
年配で身体も想定以上に弱っているのに、見る側がドキドキしてしまう三上の二面性を、役所広司が期待を上回るほど見事に演じ切っていた。彼のストーリーに関わる人物も豪華なキャスト。皆それぞれ人間味あふれる役柄で、重要なポジションとなっていて、個性豊かな登場人物全員が「社会の厳しさ」を痛感しているので、誰かしらに共感できるはず。
私は見終わった後、爽やかな風に揺られる秋桜が愛おしくなった。

映画レビュー

杉本穂高

杉本穂高さん PRO
2021年3月31日 | PCから投稿

役所広司がチャーミングだ。ヤクザをこんなにチャーミングに描いた作品...

役所広司がチャーミングだ。ヤクザをこんなにチャーミングに描いた作品は今までにどれくらいあったんだろうか。
長い刑期を終えて、出所した男を待っていたのは厳しい社会の現実だった。すっかり世相は変わり、暴力団に対して厳しい世の中になっている。短気な性格の主人公もなんとか自分を抑えながら生きているが、時に暴発する。路上で絡んできたヤンキー連中をボコボコにした時に役所広司の無邪気さがすごい。衝動的に(ある意味でそれは自分らしく振舞っているということでもある)暴力をふるう主人公がどこか子どもっぽく、かわいく見えるように西川監督は撮っている。なかなかすごい発想である。性根は真っすぐで、仁義に厚いとかそういう面もあるにはあるが、それにしても暴力衝動に駆られた時にその無邪気が最大限に発揮されているというのがすごい。
2020年代は、この映画の主人公のような人物が、自分らしく生きられる時代ではなくなった。それでも人は生きていかねばならない。いい奴もいれば悪い役も相変わらずいる。時代に居場所を奪われた人はどうすればいいのか。自分を殺して社会に合わせることが良いことなのか。本作を観た人がそれぞれの人生で考えねばならないことだ。

清藤秀人

清藤秀人さん PRO
2021年2月17日 | iPhoneアプリから投稿

これは「役所広司を楽しむ映画」

殺人罪で13年の刑期を終え、出所して来たのは、時代の変化に対応できず、何事にもすぐにキレてしまう三上なる男。しかし、見た目は荒くれ者でも、彼は他人の不幸を見逃せない実直で正義感に溢れる人物であった。だから、身元引受人の弁護士夫婦や、TVプロデューサーの指示で三上の出所後の動向を撮影しようとする小説家志望の青年や、三上を万引き犯と勘違いしたことをきっかけに親しくなるスーパーマーケットの店長等、周囲の人々を自然に巻き込み、そして、魅了していく。やがて、気付くのは、なぜ、三上のような人間が犯罪を犯し、人生の時間を奪われ、社会復帰に苦労しなければならないのか?という疑問だ。それは同時に、今の日本社会を構築している我々への問いかけでもある。30年以上前に出版された佐木隆三の原作を現代に置き換えた物語は、細部に変更を加えて、2021年の日本人に向けて痛烈なメッセージになっている。「果たしてここは、すばらしい世界なのか?」という。秀逸な社会派人間ドラマであることは間違いない。でも実のところ、三上を演じる役所広司を見ているだけで、知らないうちに時間が過ぎ去ってしまう、言うなれば、「役所広司を楽しむ映画」でもある。ここ何十年もの間、高い頻度で日本映画に貢献してきた稀代の演技派が、それでもまだ、物凄く面白くて新鮮でさえあるという事実の方が、映画そのものより衝撃的なくらいだ。

細野真宏

細野真宏さん PRO
2021年2月10日 | PCから投稿

タイムスリップしたような主人公の境遇が現代社会の生きづらさを巧く表す。役所広司ありきの作品!

「ゆれる」(2006年)で❝期待できる監督❞となり、「ディア・ドクター」(2009年)でこれは凄い監督が現れたと思った西川美和監督の最新作。
実は、残念ながら私は「ディア・ドクター」以降の2作についてはあまり響かなかったのが本音でした。
オリジナル脚本にも限界はあるので、本作では長編映画で初の原作物の作品となりました。原作の主人公は「実在の元殺人犯」で、本作では舞台を約35年後の「現代」に置き換えるなどしています。
その結果、「今のヤクザ」には、様々な法律で縛られている背景があるため、生きづらさを、より見せやすくすることに成功していました。
生活保護の現実や、住まい、仕事など様々なシーンでの生きづらさを描いています。
とは言え、本作は不思議と❝湿っぽい❞感じの作品ではなく、常に❝面白み❞が存在しています。これは主人公のキャラクターが大きく、役所広司でなければ、ここまでの面白さや凄みなどのある人物像を作り上げることができなかったと思います。
そして、長澤まさみがテレビのプロデューサー役で登場し、そんな13年の刑期を終え「社会に適応しようとあがく主人公」を追った番組を作ろうとします。
最初は、企画を立てた長澤まさみと、フリーディレクター役の仲野太賀が2人で追いかけていきますが、プロデューサーである長澤まさみは比較的早く仲野太賀に押し付けるなど、こんなところでも現実社会を投影しています。
主人公が終盤で行きついた仕事先は介護施設でしたが、ここでもやはり生きづらさは多くあります。ただ、一方で❝あたたかさ❞もあり、最初は意味不明な映画タイトルですが、ラストで意味が分かると思います。
西川美和監督の新たな挑戦となった本作を、私は成功だと感じました。

山田晶子

山田晶子さん PRO
2021年2月9日 | スマートフォンから投稿

心がえぐられる「すばらしき世界」

西川美和監督が、実在の男を描いた昭和の原作(身分帳)に惚れ込み、時代を「今」に置き換えた本作の主人公(三上)は、役所広司。西川美和監督が描きたかった「生きづらくて、優しい」社会を生き抜く三上という人となりがストレートに伝わり、彼の「優しさ、時々狂気さ」が見え隠れする言動は見る側の心に突き刺さる。
三上は、困っている人を放っておけず、「これはいけないことだ」と思うと、つい当事者のために罵声や暴力を正当化してしまう元殺人犯。しかし、ベースは「優しさ」から起こっていることが作品を通して感じられるため、厳しい描写よりも人間の温かみを感じるところが本作の見どころの一つとなっている。
三上の行動を軸に、「社会に対する疎外感」を伝える西川美和監督(脚本)の視点がリアルで、ユーモアもあり泣けてくるうえに、改めて「社会」と「人間」を考える架け橋のような映画に仕上がっている。
年配で身体も想定以上に弱っているのに、見る側がドキドキしてしまう三上の二面性を、役所広司が期待を上回るほど見事に演じ切っていた。彼のストーリーに関わる人物も豪華なキャスト。皆それぞれ人間味あふれる役柄で、重要なポジションとなっていて、個性豊かな登場人物全員が「社会の厳しさ」を痛感しているので、誰かしらに共感できるはず。
私は見終わった後、爽やかな風に揺られる秋桜が愛おしくなった。