シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!
人生をかけた舞台の幕が上がる、一発逆転エンターテイメント!
19世紀末のパリを舞台に、ベル・エポック時代を象徴する戯曲の誕生秘話を描いた伝記ドラマ。
映画レビュー
PRO
恋文代筆の物語類型が持つ普遍の魅力を重層的に構成した技あり作劇
高森 郁哉さん | 2020年11月27日 | PCから投稿
岩井俊二監督の「ラストレター」やNetflix映画「ハーフ・オブ・イット」など、ラブレターの代筆や正体をなりすました文通を軸にした恋愛物は、バリエーションを増やしつつ今も作られ続けているが、その源流が19世紀末のパリで誕生した戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」だ。演劇ファンでなくとも、舞台を現代の北米に置き換えた映画「愛しのロクサーヌ」で大筋を知った人も多いはず。
さて本作は、“傑作劇の誕生秘話”という体で、劇作家エドモンが友人の恋文を代筆することに着想を得て、件の戯曲を書き上げ上演にこぎ着けるまでを快調に描く。劇中劇でのシラノとロクサーヌの文通、映画の中でのエドモンと衣装係の文通、2本の恋文代筆のストーリーラインを重層的に構成し、「シラノ」が持つ魅力を新たな切り口で伝えている。
俳優出身のアレクシス・ミシャリクは、16年に作・演出して高評価された舞台劇を、自ら映画化して長編監督デビューを果たした。俯瞰するなら、シラノ、エドモン、アレクシスの3重構造の活躍譚と捉えることもできよう。