ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日
世界57カ国で大ヒットしたCGなしの奇跡の物語
少女とホワイトライオンの友情、家族の再生を描き「世界はきっと変えられる」という思いが胸に響く。
映画レビュー
PRO
CGでは表現し得ないことを改めて知らしめてくれる
和田隆さん | 2021年6月25日 | PCから投稿
少女ミアとホワイトライオンの友情と家族の再生が主軸に描かれるが、実は南アフリカの社会問題となっているトロフィー・ハンティングの一種“缶詰狩り”がもう一つの重要なテーマとなっている。日本ではあまり聞き馴染みのないトロフィー・ハンティングとは、トロフィー(獲物の角などから作られる狩猟記念品)や娯楽の獲得を目的とした狩猟のこと。そして“缶詰狩り”とは、人工的に増殖させた野生動物を囲いの中で狩るもので、アフリカでは産業として確立されているのだ。
ライオンファーム経営のためにロンドンから移住し、南アフリカの生活に馴染めなかった11歳のミアが、生まれたての頃から友情を育んだホワイトライオンを必死に守ろうとする姿と、家族の葛藤と再生の物語は、動物ものとして、ファミリー向け映画としてシンプルにお薦めできる。また、日本から遠く離れた地の社会問題や野生動物の実情を知ることができる作品としても、一見の価値ある作品だ。
しかも、この映画のもうひとつの見どころは、3年以上かけてCGなしで撮影されたというリアルな映像で、それが作品に説得力を与えている。たった3年で立派に育ったホワイトライオンの行動は野生動物そのもので危険。CGや合成技術などを駆使して撮られたものと思いきや、実は時間をかけて少女とライオンのリアルな関係を築き撮影されたもの。野生動物たちの迫力や大自然の圧巻の美しさは、CGでは表現し得ないことを改めて知らしめてくれる。