秘密への招待状

   112分 | 2019年 | G

ジュリアン・ムーア×ミシェル・ウィリアムズ2大女優競演

アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品をハリウッドリメイク。ラストに明かされる驚きの真実に、心が震える感動のヒューマンドラマ。

2006年アカデミー外国語映画賞にノミネートされたデンマークのヒューマンドラマ「アフター・ウェディング」をジュリアン・ムーアとミシェル・ウィリアムズ主演でハリウッドリメイク。インドで救護活動に人生を捧げるイザベルと、ニューヨークでメディア会社を経営するテレサ。イザベルはテレサに自身の孤児院を支援してもらうため、ニューヨークを訪れる。「娘の結婚式ならゆっくり話ができる」というテレサから結婚式への招待を受けたイザベル。その式場でイザベルが出会ったテレサの夫はイザベルが過去に別れた恋人オスカーだった。さらに、新婦グレイスがオスカーとの間にできたイザベルの娘であることに気づき……。オリジナル版の男性2人主人公から女性主人公に設定が変更され、テレサ役をムーア、イザベル役をウィリアムズがそれぞれ演じる。

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映画レビュー

牛津厚信

PRO

二人の名女優なくして本作は生まれ得なかった

牛津厚信さん | 2021年2月25日 | PCから投稿

この映画の内容を全く知らぬまま見始めた私は、謎が謎を呼ぶ語り口にすっかり引き込まれてしまった。幾度か登場する上空からゆっくり舞い降りるカメラワークは、ヒロインが瞑想にふける際の精神状態とも通底しているのだろう。そして物語もまた、自分の意識や感覚だけでは到底及びつかない場所から、運命がふわりと舞い降りてくる。そうやって結婚式のくだりになって私はこの映画が北欧の名作のリメイクであることにハッと気づくわけだが(遅すぎる)、そこで芽生えた思いは主に二つ。一つはやはり女優陣の巧さに尽きる。それぞれの思惑、経験、人生哲学を芯に秘めた両輪となる女性たちを、二人の女優があまりに見事に生き切った。が、一方で気になるのは、国際援助や国際支援といった要素がややバックグラウンドに留まっていること。彼らをそこへ向かわせる情熱や理由をもう少し描いてくれれば、物語の厚みや個々のキャラクターへの理解が増したと思うのだが。

清藤秀人

PRO

もしかして、偶然と必然は同義語かもしれない

清藤秀人さん | 2021年2月16日 | iPhoneアプリから投稿

自らが進める慈善事業の出資者から、娘の結婚式に出て欲しいと誘われ、出席してみたらなんと、花嫁の父はかつての恋人だった!?そんな、あり得ない偶然の裏側に潜んでいる意外な事実を解きほぐす物語は、人生の行手に待ち受ける驚きと衝撃を描きながら、それでも結局、人には行き着くべき場所があると教えてくれる。同時に、映画または作劇がもたらす醍醐味を堪能できる本作。だから、「そんなのあり得ないでしょ」と放棄せず、最後まで付き合ってみて欲しい。もしかしたら、偶然と必然は同義語かもしれないではないか。つまり、運命的な出会いや別れや再会は、予め用意されていたものなのなもしれないという人生観。ミシェル・ウィリアムズが水に流されていくように目的地に向かうヒロインの変幻自在さを、ジュリアン・ムーアが頑なに思いを実行しようとするキャリアウーマンの悲しさを、それぞれうまく演じている。いかにも頼りない父親役のビリー・クラダップも適材適所な配役だ。もし興味があれば、主人公の2人が男性のオリジナル作品「アフター・ウエディング」(マッツ・ミケルセン主演のデンマーク映画)と見比べてみては如何だろう。そっちはそっちで、また別の味わいがあるので。

高森 郁哉

PRO

“秘密”を知らずに観るのが吉。宣伝や紹介の難しさはあるが、なかなかの良作

高森 郁哉さん | 2021年1月31日 | PCから投稿

ミシェル・ウィリアムズはインドで細々と孤児院を経営する中年独身女性イザベルの役。孤児院への出資を検討しているのでニューヨークまで事業を説明しに来るようイザベルを呼び寄せるメディア企業社長テレサ役にジュリアン・ムーア。その夫役にビリー・クラダップ。このキャストだけでピンと来て、予告編などでストーリーの予備知識を仕入れることなく本編を鑑賞すると、より驚きをもって楽しめるはずだ。

宣伝のコピーに「家族の衝撃的な〈真実〉と、新たな〈秘密〉」とあるのだが、予告編や当サイトの解説などでも家族に関する秘密が具体的に明かされているので、それを承知の上で観ると衝撃もずいぶん薄れてしまう。もっとも本作は2007年日本公開のマッツ・ミケルセン主演デンマーク映画「アフター・ウェディング」のリメイクなので、そちらを鑑賞済みの人には知られているわけだし、多少のネタばらしは仕方ないという考え方もあるか。リメイクにあたり、慈善活動家と企業経営者の2人が男性から女性に置き換えられている。

あいまいな書き方になるのをご容赦願いたいが、人生について、生き死にについての示唆に富む良作ということぐらいは言ってもいいだろう。なお監督のバート・フレインドリッチはジュリアン・ムーアの夫。主要キャストでは3人のほか、結婚式を挙げる娘役、濃い眉と高い鼻が印象的な個性派美人のアビー・クイン(「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」に少し出ていた)が魅力を放っている。シンガーソングライターとしても活動しているそうで、彼女主演の音楽映画をぜひ作ってほしい。