テリー・ギリアムのドン・キホーテ

   133分 | 2018年 | G

「未来世紀ブラジル」の鬼才テリー・ギリアムが映画化を試みるも、そのたびに製作中止などの憂き目に遭い、幾度も頓挫してきた企画で、構想から30年を経て完成にこぎつけた、ギリアム念願の一作。自らをドン・キホーテと信じる老人と若手映画監督の奇妙な旅路を描く。仕事への情熱を失っていた若手CM監督のトビーはスペインの田舎での撮影中、謎めいた男からDVDを渡される。それはトビーが10年前の学生時代に監督し、賞にも輝いた「ドン・キホーテを殺した男」だった。映画の舞台となった村が近くにあることを知ったトビーは、現地を訪れるが、ドン・キホーテを演じた靴職人の老人ハビエルが自分を本物の騎士だと信じ込むなど、村の人々はトビーの映画のせいですっかり変わり果てていた。トビーをドン・キホーテの忠実な従者サンチョだと思い込んだハビエルは、トビーを無理やり連れ出し、冒険の旅へ出るが……。自らをドン・キホーテと思い込む老人ハビエルを「2人のローマ教皇」のジョナサン・プライス、トビー役を「スター・ウォーズ」シリーズのカイロ・レン役で知られるアダム・ドライバーが演じた。

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映画レビュー

高森 郁哉

PRO

「ロスト・イン・ラマンチャ」未見なら合わせてぜひ

高森 郁哉さん | 2020年1月25日 | PCから投稿

構想30年頓挫9回との触れ込みを見聞きした方も多いはず。ギリアムの長年のファンなら2000年頃製作が進められ挫折した過程を収めたドキュメント「ロスト・イン・ラマンチャ」も観ているだろう。もし未見なら、今作を観る前でも後でもいいのでぜひご覧あれ。この壮大な奇作がよくぞ完成したものだとの思いを一層強めるに違いない。

騎士道物語の読み過ぎで自らを騎士だと信じたドン・キホーテ。トビーの学生映画でドン・キホーテを演じたことで、自らがキホーテだと思い込んだ老人ハビエル。ハビエルに従者サンチョだと勘違いされ共に旅するうち狂気と妄想の世界に飲み込まれていくトビー。現実と虚構、正気と狂気がメタに入り混じって展開する物語と映像世界はまさにギリアム節!アダム・ドライバーはトビーみたいに少々ポンコツな感じのキャラが似合う。ジョナサン・プライスは「2人のローマ教皇」と見比べるとその演技の幅に改めて感嘆させられる。