望み

   108分 | 2020年 | G

スクリーン2

堤幸彦監督と堤真一が初タッグを組み、雫井脩介の同名ベストセラー小説を映画化したサスペンスドラマ。一級建築士の石川一登と校正者の妻・貴代美は、高校生の息子・規士や中学生の娘・雅とともに、スタイリッシュな高級邸宅で平和に暮らしていた。規士は怪我でサッカー部を辞めて以来、遊び仲間が増え無断外泊することが多くなっていた。ある日、規士が家を出たきり帰ってこなくなり、連絡すら途絶えてしまう。やがて、規士の同級生が殺害されたニュースが流れる。警察によると、規士が事件に関与している可能性が高いという。行方不明となっているのは3人で、そのうち犯人と見られる逃走中の少年は2人。規士が犯人なのか被害者なのかわからない中、犯人であっても息子に生きていてほしい貴代美と、被害者であっても彼の無実を信じたい一登だったが……。貴代美役に「マチネの終わりに」の石田ゆり子。「八日目の蝉」の奥寺佐渡子が脚本を手がけた。

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監督: 堤幸彦
原作: 雫井脩介
脚本: 奥寺佐渡子
出演: 堤真一石田ゆり子岡田健史清原果耶三浦貴大早織西尾まり平原テツ渡辺哲加藤雅也市毛良枝松田翔太竜雷太
日本 / 日本語
(C)2020「望み」製作委員会

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映画レビュー

高森 郁哉

PRO

自分の家族に起きたら、何を望む

高森 郁哉さん | 2020年9月29日 | PCから投稿

前に「人魚の眠る家」のレビューで「当たり外れの落差が激しい堤幸彦監督」と書いたが、本作は“当たり”だ。まず石川家を演じた堤真一、石田ゆり子、清原果耶がいずれも感情の起伏を大仰になりすぎない範囲で効果的に表現し、観客を引き込み飽きさせない(長男役の岡田健史も悪くないが、出番が少なかった)。

そして、第5の主要キャラクターと呼びたくなるほどの存在感を放つのが、堤演じる建築士・一登が自ら設計した石川邸(外観は実在の家だが、室内はセットを構築)。アイランドキッチン、妻の仕事スペース、2階との行き来が一目瞭然な階段など、開放感あふれるリビングの空間構成は一登の理想の具現化だが、長男の失踪後は3人の食い違う“望み”が衝突する修羅場と化す。

行方不明の身内が殺人犯か犠牲者かという両極端の可能性に翻弄される家族を、マスコミ・ネット・世間が追い込んでいく光景は、悲しいかなこの国の現実を確かに映している。