ありがとう、トニ・エルドマン
第69回カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞
正反対の性格の父娘が織り成す交流をユーモラスに描き、ドイツで大ヒットを記録したヒューマンドラマ。
映画レビュー
PRO
笑いと涙で父娘の距離を縮めるエルドマンという精霊
牛津厚信さん | 2017年12月30日 | PCから投稿
ネタバレ
PRO
歪んだ社会に舞い降りた風変わりな天使、エルドマン
清藤秀人さん | 2017年6月17日 | PCから投稿
ルーマニアのブカレストで経営コンサルティング業に勤しむ娘を訪ねて故郷のドイツからやって来た父親は、娘が仕事上で多用するパフォーマンスとかアウトソーシングとかの新興用語の意味が分からない。しかし、そんな父がバレバレの変装と嘘を使ってまで娘に密着するのは、彼女が決して幸せではないことを知っているからだ。かつては社会主義独裁政権によって支配されていたルーマニアが、今やヨーロッパに於けるビジネスの中心地であることが意外だし、町の片隅にたむろする貧しい移民たち(もしくはロマ)との対比は、急激な変化に対応し切れてないヨーロッパの今を映し出しているかのよう。父が演じるトニ・エルドマンは、そんな歪んだ社会と、資本主義の激流に流されていく娘にそっと手を差し伸べる風変わりなエンジェル。その背中には深い哀切といっぱいのユーモアが漂っている。