ステージ・マザー

   93分 | 2020年 | PG12

新たなる希望と友情を描くハートウォーミングな物語

普通の主婦がゲイバー再建に立ち上がり、偏見を乗り越え自分らしく生きる意味を見つめ直す秀作。

ひょんなことからゲイバーを再建することになったごく普通の主婦の希望と友情を描いた人間ドラマ。テキサスの田舎町に住む主婦メイベリンは、長い間疎遠だった息子リッキーの訃報を受け、リッキーの暮らしていたサンフランシスコへ向かう。そこで彼女は、リッキーのパートナーであるネイサンから、息子がドラァグクイーンでゲイバーを経営していたことを知らされる。リッキーは遺言もなく亡くなってしまったため、バーの経営権が母親であるメイベリンにあり、そのバーが破綻寸前の危機にあることが発覚する。突然の展開に困惑するメイベリンは、息子が遺したゲイバーを再建するために立ち上がる。主人公メイベリン役を「世界にひとつのプレイブック」のジャッキー・ウィーバーが演じ、「キル・ビル」、ドラマ「エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY」のルーシー・リュー、ドラマ「アントラージュ★オレたちのハリウッド」のエイドリアン・グレニアーらが顔をそろえる。

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映画レビュー

牛津厚信

PRO

温もりと肯定がいっぱい。子らと共に母が羽ばたく物語

牛津厚信さん | 2021年2月27日 | PCから投稿

何もズバ抜けた行動力があるわけではないし、巨大な力がみなぎっているわけでもない。だがこのママからはじわじわと愛情をもらえる。店に集うドラァグクイーンの中には親と縁を切ったも同然の者もいる。そんな彼/彼女らを、ママはしっかりと見つめ、我が子のように肯定してくれる。そうやってただ頷くだけで、子らはどれだけ心が満たされることか。これはひょんなことからバーの経営を担うことになる女性の物語。様々な要素は含んでいるものの、究極的には広い意味での「母と子の絆」がメインだ。自信なさげでかよわく見えるのに、実は芯が太く、度胸も座ったジャッキー・ウィーヴァーのマザーっぷりが気持ちいい。全編を彩るハーモニーやパフォーマンスも飽きさせない。吹けば飛ぶよな小さいバーだが、そこは己を表現できる掛け替えのないホームでもある。本当の自分。なりたかった自分。あるべき自分。誰もが探している。そしていつでも遅すぎることはない。