映画レビュー
PRO
温もりと肯定がいっぱい。子らと共に母が羽ばたく物語
牛津厚信さん | 2021年2月27日 | PCから投稿
何もズバ抜けた行動力があるわけではないし、巨大な力がみなぎっているわけでもない。だがこのママからはじわじわと愛情をもらえる。店に集うドラァグクイーンの中には親と縁を切ったも同然の者もいる。そんな彼/彼女らを、ママはしっかりと見つめ、我が子のように肯定してくれる。そうやってただ頷くだけで、子らはどれだけ心が満たされることか。これはひょんなことからバーの経営を担うことになる女性の物語。様々な要素は含んでいるものの、究極的には広い意味での「母と子の絆」がメインだ。自信なさげでかよわく見えるのに、実は芯が太く、度胸も座ったジャッキー・ウィーヴァーのマザーっぷりが気持ちいい。全編を彩るハーモニーやパフォーマンスも飽きさせない。吹けば飛ぶよな小さいバーだが、そこは己を表現できる掛け替えのないホームでもある。本当の自分。なりたかった自分。あるべき自分。誰もが探している。そしていつでも遅すぎることはない。