私をくいとめて

私をくいとめて

3.7    133分 | 2020年 | G
私をくいとめて

私をくいとめて

3.7 133分 | 2020年 | G

スクリーン1

「勝手にふるえてろ」の大九明子が監督・脚本を手がけ、芥川賞作家・綿矢りさの同名小説を実写映画化。のんと林遣都が初共演し、おひとりさま生活を満喫する女性と年下男子の不器用な恋の行方を描き出す。何年も恋人がおらず、ひとりきりの暮らしにもすっかり慣れた31歳の黒田みつ子。そんな彼女が楽しく平和に生活できているのには、ある理由があった。彼女の脳内にはもう1人の自分である相談役「A」が存在し、人間関係や身の振り方に迷った際にはいつも正しい答えをくれるのだ。ある日、みつ子は取引先の若手営業マン・多田に恋心を抱く。かつてのように勇気を出せない自分に戸惑いながらも、一歩前へ踏み出すことを決意するみつ子だったが……。みつ子の親友・皐月役で橋本愛が出演し、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」以来となるのんとの共演が実現。

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監督: 大九明子
原作: 綿矢りさ
脚本: 大九明子
出演: のん林遣都臼田あさ美若林拓也前野朋哉山田真歩片桐はいり橋本愛岡野陽一吉住中村倫也
日本 / 日本語
(C)2020『私をくいとめて』製作委員会

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映画レビュー

村山章

PRO

能年玲奈=のんの本領発揮

村山章さん | 2020年12月31日 | PCから投稿

この映画でのんが演じた主人公は、これまでに能年玲奈=のんが演じたどの役とも似ていない。あまちゃんでも海月姫でもホットロードでもこの世界の片隅にでもない。それは、発声ひとつを聴いても明確にわかる。主人公がどんな人間で、どんな声を発し、それがカメラでどう映るべきなのか。そういった確信に裏打ちされているからこそ、この感情の振れ幅の広い主人公が、類まれなる実体感を持っているのだと思う。残念な事情で、存分に演技の実力を発揮する機会が少なかった彼女だが、どれだけすごい役者なのかを目の当たりにするためだけでも、料金以上の価値がある。

ただ、演出面については、個人的には歩調が合わないというか、乗れないところが多かった。演技だけでも十分素晴らしく、観ているこちらものめり込むのに、BGMが余計だと思ってしまったシーンもあった。しかし、名演技を画面に定着させるのもまた監督の才能であるのかも知れず、一方的に「のんはすごい」と言う気はなくて、映画の魅力がどこから生まれるのかについても考えさせられた。

高森 郁哉

PRO

大久監督とのんの出会い。あまちゃんコンビの再会。模索する表現者たちの邂逅に感慨

高森 郁哉さん | 2020年12月19日 | PCから投稿

のんはどんな役にでもなりきる器用な演者ではない。だが、どんな役を演じても自身の個性が前面に出てくる俳優でもない。容姿と表情と声から醸すナチュラルで柔らかな魅力を備えつつ、表現する行為を常に模索している求道者のストイックさも感じさせ、本作のみつ子役はそうした彼女の資質がピタリとはまった。

ピン芸人として活動した時期もあったという大九明子監督にも、そんな模索する表現者の気概が感じられる。温泉ホテルの演芸ショーでの一幕は映画オリジナルであり、原作にあった抵抗しにくい立場の女性へのセクハラを、監督が実体験を交えて翻案したのだろう。ここに込められたメッセージを、特に男性観客はしっかり受け止めなければならない。

そして、綿矢りさが「あまちゃん」で親友役だった2人に当て書きしたのではと妄想してしまうほど絶妙なキャスティングになったのが、みつ子と久々の再会を果たす皐月役の橋本愛。互いのポートレートを描く場面は「燃ゆる女の肖像」を思わせもし、女性たちの絆を感じるとともに、悩みながらも表現すること、ひいては生きることを楽しむ喜びを教えられた気がした。

細野真宏

PRO

のんと林遣都の演技が光る、ちょっと変わった「邦画では珍しい意欲作」。

細野真宏さん | 2020年12月18日 | PCから投稿

誰もが脳内にもう一人の自分がいて、自問自答をし会話をしていると思いますが、本作では、それを「見える化」しています。
「ひとりきりの生活」に慣れきっている主役の「31歳の黒田みつ子」をのんが演じています。
かなり情緒が不安定な演技も含めてとても良かったです。
「取引先の若手営業マン・多田」を演じる林遣都もどんどん良い役者になっています。ちなみに、本作では、(これまでは一度も感じたことが無かったのですが)立ち振る舞いや話し方も阿部寛と似ていると感じました。
本作は、敢えて分類すると、「前半」「中盤」「後半」と3つのパートに分かれています。
「前半」の私生活や会社などのシーンは、テンポや初々しい感じもよく私は特に気に入っています。
このまま進んでいくとかなり期待できるな、と思っていたら、「中盤」で舞台が海外に移ります。
ここで作風が一転して変わります。
そして「後半」は、「前半」に近い作風に戻りますが、会社関連のシーンは変わらず良かったです。
ただ、ラストのほうは、ちゃんと考察すると「どこからどこまでが夢なんだろうか?」と区別がつきにくい演出に少し違和感を…。「私をくいとめて」というタイトルの意味は分かりましたが、夢の中の夢【「インセプション」的な?】である可能性もあって、ここはもう少しシンプルな方が良かったかな、と思いました。
個人的には、「前半」のノリでそのまま突っ走ってもらえたら、もっと評価は高かったので、その点が若干のマイナス要素です。(ラストの鍵の仕込みも、本当に必要だったのか判断が難しいところです)
とは言え、のんと林遣都の演技が光る意欲作であり、見て損はないと思います。

追記
公開前は非公開情報だった、心の声「A」の中村倫也は、女性の声も上手いので隠れた名演でした。

映画レビュー

村山章

村山章さん PRO
2020年12月31日 | PCから投稿

能年玲奈=のんの本領発揮

この映画でのんが演じた主人公は、これまでに能年玲奈=のんが演じたどの役とも似ていない。あまちゃんでも海月姫でもホットロードでもこの世界の片隅にでもない。それは、発声ひとつを聴いても明確にわかる。主人公がどんな人間で、どんな声を発し、それがカメラでどう映るべきなのか。そういった確信に裏打ちされているからこそ、この感情の振れ幅の広い主人公が、類まれなる実体感を持っているのだと思う。残念な事情で、存分に演技の実力を発揮する機会が少なかった彼女だが、どれだけすごい役者なのかを目の当たりにするためだけでも、料金以上の価値がある。

ただ、演出面については、個人的には歩調が合わないというか、乗れないところが多かった。演技だけでも十分素晴らしく、観ているこちらものめり込むのに、BGMが余計だと思ってしまったシーンもあった。しかし、名演技を画面に定着させるのもまた監督の才能であるのかも知れず、一方的に「のんはすごい」と言う気はなくて、映画の魅力がどこから生まれるのかについても考えさせられた。

高森 郁哉

高森 郁哉さん PRO
2020年12月19日 | PCから投稿

大久監督とのんの出会い。あまちゃんコンビの再会。模索する表現者たちの邂逅に感慨

のんはどんな役にでもなりきる器用な演者ではない。だが、どんな役を演じても自身の個性が前面に出てくる俳優でもない。容姿と表情と声から醸すナチュラルで柔らかな魅力を備えつつ、表現する行為を常に模索している求道者のストイックさも感じさせ、本作のみつ子役はそうした彼女の資質がピタリとはまった。

ピン芸人として活動した時期もあったという大九明子監督にも、そんな模索する表現者の気概が感じられる。温泉ホテルの演芸ショーでの一幕は映画オリジナルであり、原作にあった抵抗しにくい立場の女性へのセクハラを、監督が実体験を交えて翻案したのだろう。ここに込められたメッセージを、特に男性観客はしっかり受け止めなければならない。

そして、綿矢りさが「あまちゃん」で親友役だった2人に当て書きしたのではと妄想してしまうほど絶妙なキャスティングになったのが、みつ子と久々の再会を果たす皐月役の橋本愛。互いのポートレートを描く場面は「燃ゆる女の肖像」を思わせもし、女性たちの絆を感じるとともに、悩みながらも表現すること、ひいては生きることを楽しむ喜びを教えられた気がした。

細野真宏

細野真宏さん PRO
2020年12月18日 | PCから投稿

のんと林遣都の演技が光る、ちょっと変わった「邦画では珍しい意欲作」。

誰もが脳内にもう一人の自分がいて、自問自答をし会話をしていると思いますが、本作では、それを「見える化」しています。
「ひとりきりの生活」に慣れきっている主役の「31歳の黒田みつ子」をのんが演じています。
かなり情緒が不安定な演技も含めてとても良かったです。
「取引先の若手営業マン・多田」を演じる林遣都もどんどん良い役者になっています。ちなみに、本作では、(これまでは一度も感じたことが無かったのですが)立ち振る舞いや話し方も阿部寛と似ていると感じました。
本作は、敢えて分類すると、「前半」「中盤」「後半」と3つのパートに分かれています。
「前半」の私生活や会社などのシーンは、テンポや初々しい感じもよく私は特に気に入っています。
このまま進んでいくとかなり期待できるな、と思っていたら、「中盤」で舞台が海外に移ります。
ここで作風が一転して変わります。
そして「後半」は、「前半」に近い作風に戻りますが、会社関連のシーンは変わらず良かったです。
ただ、ラストのほうは、ちゃんと考察すると「どこからどこまでが夢なんだろうか?」と区別がつきにくい演出に少し違和感を…。「私をくいとめて」というタイトルの意味は分かりましたが、夢の中の夢【「インセプション」的な?】である可能性もあって、ここはもう少しシンプルな方が良かったかな、と思いました。
個人的には、「前半」のノリでそのまま突っ走ってもらえたら、もっと評価は高かったので、その点が若干のマイナス要素です。(ラストの鍵の仕込みも、本当に必要だったのか判断が難しいところです)
とは言え、のんと林遣都の演技が光る意欲作であり、見て損はないと思います。

追記
公開前は非公開情報だった、心の声「A」の中村倫也は、女性の声も上手いので隠れた名演でした。