SLEEP マックス・リヒターからの招待状

   99分 | 2019年 | G

【先行独占配信最終日】天才音楽家マックス・リヒターが贈る奇跡の体験

かつてない真夜中のコンサートを追ったドキュメンタリー。美しき眠りの世界へ、ようこそ。

配信は終了しました。

「メアリーとエリザベス ふたりの女王」「アド・アストラ」「メッセージ」など、数多くの映画音楽も手がけた音楽家マックス・リヒターが企画した「眠り」をテーマにしたコンサート「SLEEP」を追ったドキュメンタリー。真夜中に開演し、終演時間は明け方まで。会場に並べられたベッドに横たわる観客たちが聞くのは、眠っている間に聞くために作られたリヒターの「SLEEP」ライブ演奏だ。8時間以上におよぶライブ中、本当に眠ってしまっても、会場を歩き回ることも自由というこのライブは、ロサンゼルス野外のグランド・パークやシドニーのオペラハウス、アントワープの聖母大聖堂といった世界各地のシンボリックな場所で開催され、大きな話題となった。本作では観客に新たな音楽体験を提示したこのコンサートの全貌と裏側、そしてリヒター自身の素顔に迫っていく。

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映画レビュー

高森 郁哉

PRO

現代の都市生活者という“魂の難民” 眠りの音楽に癒され再生する

高森 郁哉さん | 2021年3月29日 | PCから投稿

夜の公園で静かに穏やかに音楽が始まる
舞台にはピアノとシンセと小編成の弦楽器とボーカル
交代で休憩をはさみながら8時間にわたり音を紡いでいく
客席に相当するスペースにゆったり並ぶ簡易ベッド
空気を優しく揺らす音の波を浴び聴衆は眠りに落ちる

鍵盤でミニマルな分散和音のリズムを刻むマックスリヒター
聴衆と音楽の関わり方を模索してきた現代音楽家
脳科学者に話を聞き
睡眠時の脳波に適する楽曲を追求した

映像作家の妻ユリアマールとの共同プロジェクト
ハンガリーで生まれ難民を体験したユリア
難民問題に迫ろうとする気持ちを持ち続けていた
なるほどベッドが並ぶ会場は難民や被災者の避難所のよう
騒音のなか時間に追われる都市生活者はいわば魂の難民
癒しと救いを求めSLEEPにやって来る

リヒターの低周波を強調する音作りは胎児の聴覚を意図
聴衆はまどろみのなか母胎にいた記憶を呼び覚ますのか
明るくなった空に最後の一音が溶けて消える
目覚めた人々は生まれ変わった気分を愉しむ

ナタリージョンズ監督は優れた音楽的感性と詩心ある映像で
一夜がかりのSLEEPを手軽に疑似体験させてくれる
観始めて早々に寝落ちしたとしてもそれはきっと正解
リヒターの音楽に心と体が反応したのだから

牛津厚信

PRO

眠りの神秘や至福に心を寄せるひととき

牛津厚信さん | 2021年2月27日 | PCから投稿

マックス・リヒターといえば、その音の調べで様々な名作映画を彩ってきたことで知られる。そんな彼が「眠り」をテーマに紡ぎ上げた8時間に及ぶ楽曲が「Sleep」。本作はリヒターが世界各地の会場で夜な夜な「sleep」の生演奏に挑む姿を追いかけ、企画の意図やそもそもの人となりに迫っていく。例えば、そこで語られる一つは、眠りに落ちていく瞬間のこと。いま自分が寝ているのか覚めているのか判然としない状態でこみ上げる何とも言えない幸福感ーーー。我々がタルコフスキーの映画で感じる至福はまさにこの典型だろうし、さながらリヒターの一連の試みはその音楽版といったところなのかも。一方、会場に並んだ夥しい数のベッドは実に壮観だし、本公演中は寝ても起きても歩き回ってもよしとする自由さは前代未聞。観客の姿も込みで何もかもが美しい。本作を見ると眠りについての考えが変わる。日々の眠りともっと大事に向き合いたいと感じるはずだ。