バイス

   132分 | 2018年 | G

バイス

132分 | 2018年 | G

「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のスタッフ&キャストが再結集し、ジョージ・W・ブッシュ政権でアメリカ史上最も権力を持った副大統領と言われ、9・11後のアメリカをイラク戦争へと導いたとされるディック・チェイニーを描いた社会派エンタテインメントドラマ。1960年代半ば、酒癖の悪い青年だったチェイニーは、後に妻となる恋人リンに叱責されたことをきっかけに政界の道へと進み、型破りな下院議員ドナルド・ラムズフェルドの下で政治の裏表を学んでいく。やがて権力の虜になり、頭角を現すチェイニーは、大統領首席補佐官、国防長官を歴任し、ジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領の座に就くが……。これまでも数々の作品で肉体改造を行ってきたクリスチャン・ベールが、今作でも体重を20キロ増量し、髪を剃り、眉毛を脱色するなどしてチェイニーを熱演した。妻リン役に「メッセージ」「アメリカン・ハッスル」のエイミー・アダムス、ラムズフェルド役に「フォックスキャッチャー」「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のスティーブ・カレル、ブッシュ役に「スリー・ビルボード」のサム・ロックウェルとアカデミー賞常連の豪華キャストが共演。第91回アカデミー賞で作品賞ほか8部門にノミネートされ、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した。

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映画レビュー

Dan Knighton

PRO

Good Modern Historical Drama

Dan Knightonさん | 2021年11月25日 | PCから投稿

Seeing Will Ferrel on the producer credits is a surprise considering the serious skewing of American politics in this analysis of former Vice President Dick Cheney's contributions to turbulent culture of the US today. Handled similarly with direct monologues as in The Big Short, Vice arguably hits the nail on the head pretty well in showing why the country has changed so much in the last 20 years.

村山章

PRO

リベラル派からの一方的な攻撃ではない。

村山章さん | 2019年5月29日 | Androidアプリから投稿

ディック・チェイニーやブッシュ政権、共和党への痛烈な皮肉と攻撃にも見えるが、劇中で触れているように、一個人や一陣営を非難するための作品ではない。矛先は、外面のイメージや曖昧な印象だけを見て事態を理解しようとしない大衆に向いていて、むしろチェイニーという人物(とその妻)についてはある種の魅力を感じ、面白がっているようにも思える。つまり本作は、社会派のブラックコメディではあるがプロパガンダ映画ではないのだ。

もちろん根底には『マネーショート』の金融業界に対する怒りと同種の、国家権力への怒りがある。では悪者がいなくなれば世の中はよくなるのか? 繰り返し繰り返し悪者をのさばらせるシステムを成り立たされているのは誰なのか? そういう俯瞰の目線があるからこそ、たやすく日本にも置き換えられるし、ぶっちゃけ笑ってられないくらい日本の現実について考えさせられる作品であったと思う。

杉本穂高

PRO

権力とは何なのか

杉本穂高さん | 2019年4月30日 | PCから投稿

お飾りの役職だったはずの副大統領の立場で、アメリカを牛耳って魅せたチェイニーはどういう人物なのかについて、丹念に迫っている。クリスチャン・ベールのなりきり芝居は今回も素晴らしい。エイミー・アダムスが演じる妻のリン・チェイニーもユニークだし、スティーブ・カレルのラムズフェルド、サム・ロックウェルのブッシュ大統領もそっくりだ。
見た目の再現度が高いゆえにこんな滑稽なことがまかり通るか、という驚きを隠せない本作だが、多くの人々はなぜ彼の大言壮語に乗ってしまったのだろうか。権力とは本当につかみどころのない、フワフワとしたものだが、本作を観ると本当に実態のない思い込みに過ぎないのではないかと思えてくる。
直接関係ないのだが、ナチの大尉の軍服を着ただけで権力者になりすました兵隊を描いた『ちいさな独裁者』を思い出した。権力は幻想にすぎない。だから大言壮語の上手いやつほど権力に近づけるのかもしれない。同時代の空気を知るには『記者たち』と合わせて観るのも良い。

牛津厚信

PRO

この時代に生まれるべくして生まれた珍種映画と呼びたい

牛津厚信さん | 2019年4月29日 | PCから投稿

ブッシュ政権下で副大統領を務めたディック・チェイニーの半生を描いた本作は、実のところアメリカ国民にとっても「知られざる物語」だったとか。祖国をイラク戦争へ導いた張本人とも言われる彼だが、その政権を掌握していく過程と、一転して家庭人たるその素顔に、我々の心はただただ翻弄され続ける。

作り手たちの共通認識として「決して悪人と決めつけず、その人生をいったん肯定した上で描く」というものがあったそうで、だからこそシェイクスピア劇をも思わせる「人間そのもの」の探求として観る者を魅了するのだろう。本作の性質上、クリスチャン・ベールの役作りばかりが取りざたされるが、実のところエイミー・アダムスやスティーヴ・カレルも凄い。成りきっている。またそれ以上に、アダム・マッケイがもたらす壮絶な台詞量とそれを余すところなく伝えるリズム、語り口に圧倒された。この時代に生まれるべくして生まれた珍種映画と私は呼びたい。

映画レビュー

Dan Knighton

Dan Knightonさん PRO
2021年11月25日 | PCから投稿

Good Modern Historical Drama

Seeing Will Ferrel on the producer credits is a surprise considering the serious skewing of American politics in this analysis of former Vice President Dick Cheney's contributions to turbulent culture of the US today. Handled similarly with direct monologues as in The Big Short, Vice arguably hits the nail on the head pretty well in showing why the country has changed so much in the last 20 years.

村山章

村山章さん PRO
2019年5月29日 | Androidアプリから投稿

リベラル派からの一方的な攻撃ではない。

ディック・チェイニーやブッシュ政権、共和党への痛烈な皮肉と攻撃にも見えるが、劇中で触れているように、一個人や一陣営を非難するための作品ではない。矛先は、外面のイメージや曖昧な印象だけを見て事態を理解しようとしない大衆に向いていて、むしろチェイニーという人物(とその妻)についてはある種の魅力を感じ、面白がっているようにも思える。つまり本作は、社会派のブラックコメディではあるがプロパガンダ映画ではないのだ。

もちろん根底には『マネーショート』の金融業界に対する怒りと同種の、国家権力への怒りがある。では悪者がいなくなれば世の中はよくなるのか? 繰り返し繰り返し悪者をのさばらせるシステムを成り立たされているのは誰なのか? そういう俯瞰の目線があるからこそ、たやすく日本にも置き換えられるし、ぶっちゃけ笑ってられないくらい日本の現実について考えさせられる作品であったと思う。

杉本穂高

杉本穂高さん PRO
2019年4月30日 | PCから投稿

権力とは何なのか

お飾りの役職だったはずの副大統領の立場で、アメリカを牛耳って魅せたチェイニーはどういう人物なのかについて、丹念に迫っている。クリスチャン・ベールのなりきり芝居は今回も素晴らしい。エイミー・アダムスが演じる妻のリン・チェイニーもユニークだし、スティーブ・カレルのラムズフェルド、サム・ロックウェルのブッシュ大統領もそっくりだ。
見た目の再現度が高いゆえにこんな滑稽なことがまかり通るか、という驚きを隠せない本作だが、多くの人々はなぜ彼の大言壮語に乗ってしまったのだろうか。権力とは本当につかみどころのない、フワフワとしたものだが、本作を観ると本当に実態のない思い込みに過ぎないのではないかと思えてくる。
直接関係ないのだが、ナチの大尉の軍服を着ただけで権力者になりすました兵隊を描いた『ちいさな独裁者』を思い出した。権力は幻想にすぎない。だから大言壮語の上手いやつほど権力に近づけるのかもしれない。同時代の空気を知るには『記者たち』と合わせて観るのも良い。

牛津厚信

牛津厚信さん PRO
2019年4月29日 | PCから投稿

この時代に生まれるべくして生まれた珍種映画と呼びたい

ブッシュ政権下で副大統領を務めたディック・チェイニーの半生を描いた本作は、実のところアメリカ国民にとっても「知られざる物語」だったとか。祖国をイラク戦争へ導いた張本人とも言われる彼だが、その政権を掌握していく過程と、一転して家庭人たるその素顔に、我々の心はただただ翻弄され続ける。

作り手たちの共通認識として「決して悪人と決めつけず、その人生をいったん肯定した上で描く」というものがあったそうで、だからこそシェイクスピア劇をも思わせる「人間そのもの」の探求として観る者を魅了するのだろう。本作の性質上、クリスチャン・ベールの役作りばかりが取りざたされるが、実のところエイミー・アダムスやスティーヴ・カレルも凄い。成りきっている。またそれ以上に、アダム・マッケイがもたらす壮絶な台詞量とそれを余すところなく伝えるリズム、語り口に圧倒された。この時代に生まれるべくして生まれた珍種映画と私は呼びたい。