映画レビュー
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もはやオッサンになど見向きもしない若い女性の痛快さ
村山章さん | 2020年7月31日 | PCから投稿
ウディ・アレンという映画作家に「ロリコン」「若い女性に惹かれるオッサンばかり描く」というイメージが固定化したのはいつ頃からか。複雑怪奇な性的虐待疑惑とも繋がって、「キモい」という身も蓋もない意見を見ることも増えた。
確かにアレンの映画は若い女性に懸想する中年男性がよく登場するし、アレンが描く若い女性がバカっぽくて不愉快という見方もわからなくはない。ただ自分なりに弁護をしたいのは、アレンがバカっぽく描くのは女性に限ったことではないし、ほとんどの場合、年寄りは結局若い女性から見切りを付けられる。つまりオッサンは、性懲りもなく若い女に惹かれては、結局捨てられるのがアレンの恋愛観とも言える。
ただ、本作はちょっと違う。エル・ファニング演じるアシュリーは年配の男たちを(無自覚に)利用はしても、性的に惹かれるのはイケメンの映画スターのみという、オッサン側からすれば実に辛辣なキャラなのだ。そして、アシュリーの軽薄さ以上にオッサンどもは情けなく、ティモシー・シャラメ扮するもうひとりの主人公ギャツビーも薄っぺらい。薄っぺらくでバカばかりなのがアレンの描く世界であり、不思議とそこに安心を感じてしまうのだ。
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これはウディ・アレンのNYへのレクイエムなのか?
清藤秀人さん | 2020年7月27日 | PCから投稿
近年、ロンドン、バルセロナ、パリ、ローマとヨーロッパ各地を旅してきたウディ・アレンが、久々に故郷ニューヨークに戻って撮った最新作には、以前のようにコアなニューヨークはなぜか登場しない。近隣の大学に通う男子学生が、ガールフレンドを連れて案内する(予定だった)故郷ニューヨークは、ホテル・ピエールにセントラルパークにホテル・カーライルにメトロポリタン美術館と、NYビギナー用にベタなのだ。それは、話の流れに沿っているから妥当なのだが、生粋のニューヨーカーであるアレンが、あえて誰もが思い描くスポットをカメラで追うのは、彼なりの決別の気持ちがあったのではないかと想像する。つまり、養女に対する性的虐待疑惑によって、自由に映画を作れなくなった自分自身へのレクイエムを、馴染みの風景に重ね合わせたトリックなのではないかと。結果論かもしれないが、そう思う。しかしながら、単純な話を寸分の隙もなく展開させ、いつものように、最後には人間の本能がもたらす情景をさらりと見せるその手法は、朽ちてなお、粋。まだまだそれを味わいたいのだが、さて、どうなるか?
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これは、良く出来た方のウディ・アレン監督作品! 安心して劇場でご覧ください。
細野真宏さん | 2020年7月2日 | PCから投稿
クリント・イーストウッド監督作品のように毎年の単位で作品が公開されるウディ・アレン監督作品ですが、ウディ・アレン作品を大きく分けると、「出来の良いウディ・アレン作品」と「出来の悪いウディ・アレン作品」に分かれます。
これは、ウディ・アレン監督作品の幅の広さとも関係していますが、基本的な作風は安定しているものの、実験的に作風をガラッと変えたりもします。しかも、それがまた名作であったり、そうでなかったりと、なかなか目の離せない監督なのです。なので、多くのウディ・アレン監督ファンが事前に知りたいのは、前者か後者かでしょう。本作については明らかに「出来の良いウディ・アレン作品」なので、安心して劇場でご覧ください。
本作の大きな特徴には、キャストがあります。ウディ・アレン監督は、本当に旬のキャストを見抜く力があり、本作でもまた大きくキャストが変わっています。まずは何と言っても、今をときめくティモシー・シャラメと、(ダコタ・ファニングの妹の)エル・ファニングがメインで登場します。そして、その脇をジュード・ロウなどベテラン勢が支えています。中でも脇役過ぎて資料には紹介がなかったレベッカ・ホールの名前をオープニングで見つけた時は嬉しくなりました。ちなみに、レベッカ・ホールはゴールデングローブ賞で作品賞を受賞したウディ・アレン監督作「それでも恋するバルセロナ」(ペネロペ・クルスがアカデミー助演女優賞受賞)でスカーレット・ヨハンソンの親友役で主演し注目された女優です。本作ではジュード・ロウの奥さん役で出演していました。
本作は、ウディ・アレン作品の特徴の1つでもあるドタバタ劇でもありますが、セレーナ・ゴメスも加わり、先の読めない面白い展開をしていきます。タイトルにも登場するように、ウディ・アレン監督ほど「雨」が好きで、作品に自然と効果的に使える監督はいないのかもしれませんね。
さて、1966年から監督をしているウディ・アレン監督は間違いなく、最も多くの名作を生み出していると思いますが、現時点で84歳なので、これからはカウントダウンに入りつつあります。
これまでは当たり前のようにあったウディ・アレン監督作品ですが、もう当たり前ではなくなっていくので、これからは1本、1本を劇場で噛みしめながら味わっていきたいですね。
本作は、それにキチンと応えてくれる作品だと思います。