君の誕生日

   120分 | 2019年 | G

チョン・ドヨンとソル・ギョングが夫婦役で共演した感動ドラマ

韓国で起こったセウォル号沈没事故を初めて正面から題材に取り上げ、事故で息子を失った夫婦の喪失感や愛情を描く。

「オアシス」「ペパーミント・キャンディー」のソル・ギョングと「シークレット・サンシャイン」「ハウスメイド」のチョン・ドヨンという韓国映画界を代表する演技派の2人が、「私にも妻がいたらいいのに」以来18年ぶりに共演し、夫婦役を演じたドラマ。2014年に韓国で起こったセウォル号沈没事故を初めて正面から題材に取り上げた作品で、事故で息子を失った夫婦の喪失感や愛情を描いた。先にこの世を去ってしまった息子スホへの思いを抱きながら生きるジョンイルとスンナム。スホがいなくなってから初めて迎える息子の誕生日が、母スンナムは息子がいない現実を認めるようで恐ろしくてたまらない。一方のジョンイルは、息子が亡くなった日に父親としての役目を果たせなかったことに罪悪感を抱いており……。

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監督: イ・ジョンオン
脚本: イ・ジョンオン
撮影: チョ・ヨンギュ
出演: ソル・ギョングチョン・ドヨンキム・ボミンユン・チャニョンキム・スジンイ・ボンリョン
英題:Birthday
韓国 / 韓国語
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映画レビュー

高森 郁哉

PRO

正面から取り上げてはいないけれど

高森 郁哉さん | 2020年11月29日 | PCから投稿

2014年に韓国の南西沖で起きたセウォル号沈没事故。本作は同事故を初めて正面から取り上げたとの触れ込みだが、「正面から」という表現は語弊がある。事故自体の描写も救助の様子も一切ない。これが長編監督デビュー作となる新鋭イ・ジョンオンは、ボランティア活動を通じて遺族と接した体験を脚本化し、遺族の喪失感や葛藤を描く物語を組み立てた。猟奇殺人事件などを容赦ない描写で実録映画化する韓国映画界のことだから、かの沈没事故をどれほどリアルに描き出すかと期待して観ると、はぐらかされた気になるかも。それほど国民が負った傷は大きく深く、いまだ癒えずということか。

息子スホを失った現実を受け入れられず家族や周囲につらく当たる母と、負い目を感じながらも家族を繋ぎとめようとする父が、支援団体からの提案で実現したスホの誕生日会を通じて悲しみと絶望を超克する姿が感動的。遺族に寄り添う姿勢こそが今求められているのだろう。