映画レビュー
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彼らは自ら“キル・チーム”を名乗った
高森 郁哉さん | 2021年1月21日 | PCから投稿
本作を監督したダン・クラウスは短編ドキュメンタリーから出発した人で、アカデミー賞短編部門に2作品がノミネート。初の長編ドキュメンタリーとなった2014年の「The Kill Team」では複数の映画賞を受賞している。さらに同じ題材で今度は劇映画の監督に初挑戦したのがこの「キル・チーム」だ(米では2019年公開)。
アフガニスタンでの「メイワンド地区殺人」は米国民に大きな衝撃を与えたという。イラク戦争時の米兵による捕虜の拷問や虐待は日本でも大きく報じられたが、より罪深い同事件については、この劇映画で初めて知る人が大半ではないか。アフガンで任務に就いている小隊の兵士らが、新たに着任した軍曹にそそのかされ、無実の住民を殺害していく(射殺した後で遺体に武器を持たせるなどのやり方で正当化する)。この小隊の連中は自ら“キル・チーム”を名乗っていたというから驚くやら呆れるやら。
主人公の若者は、上官や仲間に認められたい思いと良心の呵責との間で葛藤する。“密告屋”と疑われ、身の危険も感じる。彼の視点でストーリーを語り、追い詰められていく状況を観客に疑似体験させる点で、やはりドラマの表現力が勝るのだろう。派手さはないものの、確かな心理描写でじわじわと戦争の暗部をつきつけてくる力作だ。